AWSを安く使うにはコツがある。オンプレミス環境と同じように考えていては、コストが高くなる一方だ。コスト削減に効果がある九つのポイントを専門家が解説する。

狙うべきは九つのポイント
サーバー乱立には要注意

 Amazon Web Services(AWS)は、実際に利用した分だけ料金が発生する従量課金制のクラウドサービスである。サービスメニューや機能も多く、それらを理解してうまく使いこなさないと、コストが大きく膨らみかねない。

 実際、安易に仮想サーバー(EC2インスタンス)を立て、オンプレミス環境と同じように使うケースが多い。このような使い方では、コストは高くつく一方だ。また、毎月の利用料金がどのくらい変動しているのかを把握せずに、知らぬ間にコストが膨らんでいたというケースもある。

 第7回から第9回では、AWSのサービスを最大限活用しながら、安価に利用するためのテクニックを紹介する。インスタンスの買い方からシステムの設計、ツールの活用まで、9個のコスト削減策をピックアップした。記事中の価格は、記事執筆時点の2015年4月のものだ。

 これらの中で、コスト削減効果が大きいものは5番目の「EC2以外のサービスをフル活用する」だ。これからシステムを設計するなら、目を通しておくとよいだろう。9番目の「監視や可視化で利用状況を把握」は、AWSのユーザーでも知らない人が意外と多いので、ぜひ参考にしてほしい。

 ただし、AWSで稼働するシステムによって、最適なコスト削減策は異なる。自社に合う対策を選び、簡単なものから順次導入するとよいだろう。

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EC2は3種類の料金体系を使い分ける
「前払い」は二つの点に注意

 Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)の仮想サーバー(インスタンス)には3種類の料金体系がある。この体系を理解し、インスタンスの賢い買い方をマスターしたい。

 通常購入するのは、一つ目の「オンデマンドインスタンス」である。管理コンソール(AWSマネジメントコンソール)からEC2を起動した場合に選択されるもので、1時間起動するごとにAWSの料金表ページ(http://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/)に記載された料金が発生する。

 二つ目の「スポットインスタンス」は、ユーザーの入札額によってインスタンス利用料が決まるもの。相場にもよるが、オンデマンドインスタンスの数分の1の料金で利用できる。ただし、インスタンスの相場額が入札額を超えると、そのインスタンスは停止してしまう。利用に当たっては、短時間に限定するのが現実的だ。

 三つ目は「リザーブドインスタンス」。これは1年または3年間のインスタンス起動権利を購入するもの。前払いで料金を支払うことで、時間当たりの利用料を大幅に抑えられる。

 例えば「c3.large」というタイプのインスタンスを1年間、24時間365日稼働させた場合、オンデマンドインスタンスだとおよそ1121.28ドルかかる。一方、リザーブドインスタンスで最も割引率の高い「All Upfront」を選ぶと753.36ドル。約33%のコスト削減だ。

 ただし注意したい点が二つある。一つはリザーブドインスタンスではインスタンスを起動していない時間も課金される点だ。起動時間が短い場合は、オンデマンドインスタンスのほうが安くなるケースもある。

 もう一つは、購入時のインスタンスのスペックと料金が、1年間または3年間固定となる点だ。AWSでは年に数回、値下げやインスタンスタイプの追加を実施する。3年間のリザーブドインスタンスを購入すると、こうした値下げや性能向上の恩恵を受けにくい。

 これらの注意点を踏まえ、起動している時間が長く、1年先まで稼働が見えているという条件で、リザーブドインスタンスを選択するとよい。