アプローチはさまざま
50%OFFも十分可能

 パブリッククラウドのコストはさまざまな方法で削減できる。実際にコスト削減に成功したIT現場は、どのような工夫をしたのか。先行7社のコスト削減事例を紹介する。

事例2
積水化学工業
前払いでサーバーを安価に購入

 パブリッククラウドによっては、前払いで単価の安いサーバーをまとめて購入できる。この方法で、コストを削減している企業は多いだろう。ただし、買い方によっては、逆に無駄なコストを支払う可能性がある。

 AWS上でグループウエアなどの社内システムを運用している積水化学工業は、120台ほどのサーバーを稼働させている。

 これらのサーバーは、ほとんどが前払いで購入した「リザーブドインスタンス」だ。システム基盤を担当する原 和哉氏(コーポレート 情報システムグループ 部長)は「リザーブドインスタンスにすると、3割ほどのコスト削減効果があった」と話す(図3)。

図3●インスタンスを1年分まとめて買う
図3●インスタンスを1年分まとめて買う
積水化学工業はグループウエアなどの社内システムをAWSで稼働。1年分のインスタンスをまとめて先払いにす るリザーブドインスタンスを活用している
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 リザーブドインスタンスは、1年または3年分のサーバーを前払いで購入するもの。一般的なオンデマンドインスタンスに比べて安い単価で購入できるメリットがある。原氏は「リザーブドインスタンスにはリスクが伴うため、適用するシステムの特徴と購入する年数に注意した」と話す。

 例えば、メールシステムなど、構成変更がなく一定のボリュームで使うことが分かっているシステムであれば、リザーブドインスタンスは有効だ。一方で、ずっと使うかどうか分からないシステムだと、リザーブドインスタンスは無駄になる可能性がある。

 また、3年分買ってしまうと、その間にEC2の値引きや性能アップにより、結果的にリザーブドインスタンスが割高になるかもしれない。システムの構成を変えたくても、一度購入したリザーブドインスタンスのタイプは同一カテゴリーのみでしか変更できない。こうしたことから、原氏はメールなどグループウエアの用途で1年分のサーバーを前払いで購入した。

 もっとも、「システム要件やパフォーマンスが変わらないことが見えているのであれば、3年分でもよい」と原氏は見る。同一インスタンスを長く使い続けることで、予算を立てやすくなるほか、インスタンスの切り替えによるシステム停止も考慮せずに済む。

 同社では、長期連休明けなど負荷が高くなるときは、通常の料金プランのサーバー(オンデマンドインスタンス)を追加的に利用する。こうした使い分けで、コストとパフォーマンスのバランスをとっている。