利用料金の費目は6種類
システム特性で大きく変動

 パブリッククラウドを利用すると、いったいどんなコストがかかるのか。クラウド利用料金は大きく六つの費目があり、事業者や機能によって体系が異なる。大きな変動要因はシステム特性。インテグレーション費用が多くを占める。

 パブリッククラウドには、大きく二つのコストメリットがある。一つはコンピュータ関連資産の圧縮に伴うコスト効果、もう一つはプロフェッショナルサービスの外部化(アウトソーシング)による人件費の削減だ。

 前者はオンプレミスの際に発生していたハードウエア関連費用やファシリティー関連費用、減価償却費が、クラウド利用料金に置き換わる(図1)。

図1●オンプレミスからクラウドに移行した場合のコスト構造の変化
図1●オンプレミスからクラウドに移行した場合のコスト構造の変化
ハードウエアやファシリティーのコストを削減できるほか、人件費の圧縮につながる。一方で、多くのシステムイ ンテグレーション費用が発生するとともに、システム構成によってクラウド利用料金が膨らむ場合がある 図
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 後者では、システムの運用や保守に関し、社内要員から外部のプロフェッショナルサービスの利用に切り替えることで人件費や経費を圧縮。同時に質的向上も期待できる。

 パブリッククラウドを利用するかどうかは、この二つのコストメリットの大きさによって判断することが多い。

 ところが、こうしたコストメリットを想定したにもかかわらず、予想以上のコストが発生するケースもある。パブリッククラウドの利用にはさまざまなコスト変動要因がある。既存システムの構成やサービスの選択によって、コストが大きく変わるためだ

 特に影響力が強いのは、システム運用にかかわるクラウド利用料金と、システム構築に伴うシステムインテグレーション費用だ。以下では、具体的にどんなコストが発生するのかを解説しよう。

8割の売り上げは「間接販売」経由

 クラウド利用料金については、パブリッククラウドの複雑なサービスメニューや課金体系によって違いが出る。賢い選択をしないと、想定以上にコストが跳ね上がる場合が多い。

 あるクラウド事業者によれば、仮想サーバーを大規模に調達する場合、メニューにはないボリュームディスカウントを適用するという。IaaSでいえば、クラウドの価格は決して高止まりしているわけではない。工夫や交渉次第で安くできる。

 一方のシステムインテグレーション費用は、場合によって大きな負担となる。ある大手クラウド事業者における顧客数と売上高の関係によると、ユーザー数の8割が直接販売経由であるのに対し、売上高の8割は間接販売経由だった。つまり、ほとんどの支払いはシステムインテグレーター経由によるものである。

 ユーザー企業が間接販売を選択する理由は明確だ。パブリッククラウドの導入に伴い、既存システムの移行や構築を同時に委託しているからである。特に大規模なクラウド利用については、ユーザー企業が方式設計や構築を行うのではなく、通常のシステム開発と同じようにシステムインテグレーターに依頼している。

 問題は、システムインテグレーターに支払うコストが大きく膨らむケースである。たとえクラウド事業者に支払う利用料金が小さくても、システムインテグレーションの費用がかさめば、オンプレミスと変わらないコストとなる。実際、パブリッククラウドの初期費用がオンプレミスのときよりも大きくなるケースもある。