最近、通信モジュールを搭載した小型の通信ボードが多数登場し、IoT機器を簡単に作れる環境が整いつつあります。これらを使うことで、高度なワイヤレス技術とインターネット技術(メール送信、ツイッター連携、クラウド連携など)を簡単に身に付けられます。また、Arduinoの持つマイコンボード技術とセンサー・アクチュエーター(駆動装置)技術を連携させ、M2M/IoTシステムがとても短時間で構築できる画期的な環境が提供できるようになりました。

 こうしたボードの例として、当社が開発した「3Gシールド」と「3GIM」(3G IoT Module)があります。3Gシールドは、オープンソースハードウエアArduino上で利用できる、第3世代携帯電話(3G)の通信モジュールを搭載した拡張ボードです。また3GIMは、世界最小(当社調べ)の3G通信ボード(25㎜×35㎜)で、様々なマイコンボードやコンピュータで利用できるようにした実運用向けボードです(写真8-1)。以降では、この3Gシールドと3GIMなどを例に取り、3G通信モジュール搭載ボードのIoTへの活用手法を解説していきます。

写真8-1●「3Gシールド」(右)と「3GIM」(左)
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写真8-1●「3Gシールド」(右)と「3GIM」(左)
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写真8-1●「3Gシールド」(右)と「3GIM」(左)
撮影:タブレイン

オープンソースハードウエアArduinoとは

 まずオープンソースハードウエアArduinoについて簡単に紹介します。Arduinoは、2005年イタリアの大学教授マッシモ・バンジー氏らによって開発されました。8ビットのマイコンボードと、それを動かすソフトウエアの統合開発環境IDE(Integrated Development Environment)の両方を指してArduinoと呼ばれています。元々は大学の電気・電子工学の学生の教育向けに開発されましたが、今では情報工学・機械工学などの理系から文系までの教育にも広がり、さらには一般企業や個人での試作・プロトタイプ開発などにも利用されるようになってきました。

 Arduinoの回路図は無償で公開されています。Arduinoの互換機や類似品も多く出回っていて、ネット販売からこれらのマイコンボードが入手できるようになっています。またArduinoに接続できるセンサー類やモーター類の「スケッチ」(Arduino上のプログラムのこと)も多く公開されていて、Webサイトから無償でダウンロードできます。

写真8-2●Arduino、3Gシールド、TABシールド(当社センサー教材キット)を重ねて利用
写真8-2●Arduino、3Gシールド、TABシールド(当社センサー教材キット)を重ねて利用
撮影:タブレイン
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 Arduinoに接続できるセンサー類やLED、モーター類、さらにはワイヤレス通信モジュールなどを搭載した拡張ボードは、「シールド」と呼ばれています。シールドは、Arduinoと接合するコネクターのピン配置が一致していて、はんだ付け無しで、接続コネクターに差し込んで利用できるようになっています。また、Arduino上に重ねることで複数のシールドを同時に使えます(写真8-2)。既に販売されているこれらのシールドや豊富なセンサー部品、アクチュエーター部品、液晶表示部品などを組み合わせ、さらにそれを動かすソフトウエアもネット上で探して利用できることから、とても短時間で、しかも安価に稼働させることができます。

 このオープンソースハードウエアの概念によって、Arduinoの普及は世界的に広がりを見せています。類似のコンセプトに基づいた、高度な開発環境やOS機能を備える「mbed」や「Raspberry Pi」なども大きなブームとなってきています。このオープンソースハードウエアの影響で、3Gプリンターの価格破壊が起こり、ドローンやロボットが誰でも安価で使える環境が整い始めました。