ユビキタスコンピューティング、センサーネットワーク、M2M(Machine to Machine communication)、そしてIoT(Internet of Things)——。時代とともにこれらの言葉が現れました。これらの共通項は、センサーやコンピュータをネットワークにつなぎ情報を伝送し、人の生活の利便性を向上させ、社会に変革をもたらすキーワードとして期待されている点です。

 これらの具現化のために絶対に欠かせない技術の1つにワイヤレス技術があります。スマートフォンに代表されるワイヤレス技術は、電話やデータ通信というアプリケーションを実現し、私たちの社会生活を支えています。今後、1兆個ものセンサーが配置され、あらゆる物がインターネットに接続されることとなったとき、ワイヤレス技術がその大半を担うことになるでしょう。

 この特集では、IoTを実現するワイヤレス技術に着目して議論を進めたいと考えています。法的整備や技術進化のおかげで、現在ではワイヤレス技術を利用してIoT/M2Mへ参入することが非常に容易となりました。その1番の理由は通信モジュールの出現です。無線システムの構築はある種、職人芸が必要な領域でしたが、通信モジュールの利用によりそのハードルは大きく下がりました。エンジニアはマイコンのシリアルラインにモジュールを接続するだけでワイヤレスな通信が実現できてしまうからです。現在では、通信モジュールにマイコンも取り込み、簡単なセンサーなら通信モジュール単体で制御できます。これは、ものづくりの優位性だけでなく小型化、低消費電力化にもつながっています。

 このようにワイヤレス技術によりIoT/M2Mの導入へのハードルは大きく下がったはずなのですが、多くのシンクタンクの予測通りにIoT/M2M市場が拡大していないのが現状です。

 その理由は何でしょうか。理由の一つは、法整備と法解釈です(参考記事)。海外では利用者の責任として認められている制御が日本では認められていないということが多いのです。

 もう一つの理由は、情報の取り扱いです。今後も様々なセンサーから非常に多くのデータが収集され、その情報が利活用されるはずです。しかし、下記のような問題も起こりました。個人が特定できないデータに関してもこのような問題が起こるのです(参考記事)。

 これらの問題は、時代的な背景の変化が必要と考えることができます。一方で非常に多くのユーザーを抱えるスマートフォンのゲームなどのアプリケーションでは、通信状況や位置情報などの情報を提供することがアプリケーションの利用条件として示され、それを許可している実態もあります。この点は今回のテーマではありませんが、深い議論が必要であり、問題提起として示したいと考えております。

 最後の問題として、IoT/M2Mで利用可能な周波数帯域が多くなったこと、そしてその選択が非常に重要であることを示します。おもな通信方式、周波数帯の通信方式については、それぞれ個別にその分野の第一人者に執筆をお願いしており、第2回以降で詳しく解説します。第1回の今回は、その概要を説明します。