2015年9月3日、個人情報保護法を改正する法律が衆議院本会議で可決・成立した。10年ぶりの改正である。改正法は個人情報の保護と利活用のバランスを強く意識したものだ。従来の制度は保護に傾き過ぎる印象を与え、いわゆる過剰反応を誘発したとの反省もあった。

 改正法では、「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」とし、新たな産業創出や豊かな国民生活に役立つことを明示している。

 普通の企業は顧客の信頼なくしては事業継続ができない。個人情報に係る問題に限らず、社会的信用を失っては存続が成り立たない。従って、個人情報についての適切な取り扱いを期待できるはずなのである。他方で、全ての人が善人とはいえないのと同様に、個人情報を適正に収集、管理、利用しているとはいえない事業者も存在する。

 著作物や特許などの知的財産、生産に係る情報、気象情報、自然災害や事故情報など、全ての情報は、それを有するだけでは意味をなさない。必要とする者と情報を共有し、それを利活用することで社会的な効用を増やすことができる。

 個人情報も同じである。本人に留めていて一切外部に出さないというものではない。関係者に提供することによって、本人にとってもメリットが生じる。

 例えば、名刺には氏名、勤務先、同住所、電話番号、メールアドレスなどの情報が記載されている。相手に渡すことにより、その後のビジネスの円滑化を図るのである。スーツの仕立て業者は、あらかじめ顧客の身長などのサイズやデザインの好みなどを保有して、より良いサービスと差別化を目指す。客もいちいち採寸してもらって、生地を端から見て回るという面倒を省ける。