市場環境の変化は加速している。2020年には1000億個のデバイス、1兆のアプリケーションがネットワークにつながり、40ゼタバイトのデータが出回るという予測もある。世の中のデータ量が爆発的に増える一方で、ビジネスサイクルは短期化している。企画から実施、成果を収穫するまでの時間は、従来よりも大幅に短くなった。

 この潮流に乗って、新しいビジネスモデルが台頭している。米国のウーバーはその一例だ。車両を1台も所有していない世界最大のタクシー会社が生まれた。ウーバーに限らず、様々な市場で革新的な企業が新たに生まれ、急成長している。既存企業は新しい企業との競争に備え十分な準備をしておく必要性が高まっている。

M&Aでデータセンターが増加、組織・IT統合で85を6に削減

 この競争を勝ち抜くためには、コストとスピードという2つの課題を克服しなければならない。クラウド導入の加速はこの文脈で理解できる。しかし、事業部門が主導してパブリッククラウドを導入した結果、セキュリティリスクが顕在してしまうこともある。パブリッククラウドでは、情報流出が発生しても気付かなかったり、当事者として対応できなかったりすることがある。デジタル時代は様々なビジネスチャンスが生まれる一方で、リスクも増大している。

 こうしたビジネス環境に対応するため、どのような方向を目指すべきか。HPにはHP on HPというコンセプトがある。これは自社開発のハードウエアとソフトウエアを自社で試用し、そこで得た知見をサービスとしてお客様に提供する考え方だ。数年前から社内インフラ基盤のクラウド化に取り組み、新しいビジネススタイルの確立に力を注いできた。

 HPはスピードと柔軟性(TransformTo a hybrid infrastructure)、セキュリティ(Protect Your digital enterprise)、データ駆動型の組織づくり(EmpowerData driven organization)、ワークプレイスの生産性(Enable Workplaceproductivity)という4つの観点で取り組んだ。

 スピードと柔軟性については、組織統合やIT統合の一環として追求した。HPはM&A(合併・買収)を繰り返してきたため、一時期、世界で85のデータセンターを展開し、6000以上のアプリケーションが動いていた。IT改革の結果、データセンターを6カ所に統合し、アプリケーションを1600に削減した。時代の変化に対応し、新しいアプリケーションが生まれる一方で、廃棄されるものも多い。そこから得た教訓は、アプリケーションやデータの特性を考慮しながらクラウドはパブリックのみならず、プライベートを含めた方法でダイナミックにマネージできるハイブリッドクラウドが重要だということだ。

 セキュリティについては、HPは毎日、膨大なセキュリティイベントに対応して、組織やビジネスを守ってきた。ネットワークやサーバー、クライアント、モバイルといった各層ごとにポリシーを策定し、対策を実行している。

 データ駆動型の組織づくりについては、勘や経験だけでなくデータ分析を踏まえた意思決定をするために取り組んでいる。顧客の嗜好や興味が激しく変わることに対応するため、HPはビッグデータを蓄積・分析し、それをビジネスに活用するための基盤の整備に力を入れている。

4つの観点で新しいビジネススタイルを確立
4つの観点で新しいビジネススタイルを確立
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モバイルワーカー比率は83%、世界中どこでも同環境で仕事

 最後のワークプレイスの生産性については、オフィスでの生産性を高めるというアプローチではなく、「会社の環境を社員に届ける」という発想でワークプレイスづくりを進めている。その一環として、社員のパソコンやスマートデバイスの中にセキュアで働きやすい環境を用意した結果、日本HPのモバイルワーカー比率は83%に達する。世界各地でモバイルワークを推進しており、社員は世界中どこでも同じ環境でパソコンやスマートデバイスを活用することができる。

 新しいビジネススタイルを社内に確立するため、HPは技術力を磨き、様々なノウハウを蓄積してきただけでなく、数々の実践によって変革を成功に導くマネジメントも体得した。変革に対応できるI Tインフラの提供にとどまらず、マネジメントを含めた総合的な知見をもとにHPはお客様の変革のお手伝いをしている。

 HPは世界各地の企業とともに、新しい時代に向けた歩みを続けている。今後も日本企業と一緒にわくわくするプロジェクトにチャレンジしたい。そうすることで、日本の社会と経済に貢献したいと願っている。