病院内に取り付ける医療機器の配置を決めるために、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)を使って仮想体験できるシステムを導入した医療機器メーカーが現れた。ナースコールのシステム開発・販売を主力事業とするケアコムだ。同社は、システム開発のTISが開発した「VR内装体験システム」を2015年5月から導入。顧客である病院に対する提案力の強化に使い始めた(写真1)。
導入の狙いの一つは、ナースコール機器の最適な設置場所を病院に対して提案できるようにすることだ。導入したシステムを使えば、現実の病院へ行かなくてもVR(仮想現実)映像の中で、機器の取り付け位置を試行錯誤して決められる。
最適なナースコール機器の位置とはどのような場所なのか(写真2)。例えば、トイレへの取り付け。普通に行動できる状態だけを想定するのではなく、倒れたときのことを考えなければならない。倒れたときは、床に近いところにナースコール機器がないと手が届かない。倒れたときにトイレのどこに体が横たわるのか「シミュレーションが必要になる」(ケアコム営業企画グループの菊池英二担当マネージャー)。
従来は、病院を訪問し、スタッフと相談して設置場所を検討、決定していた。しかし、そのたびにスタッフの作業を中断したり、取り付け場所を利用しないようにしてもらったりするなどしていた。仮想体験システムでは、当然ながらこうした手間は掛からない。病院へいく時間やコストを削減できる。