日本のITベンダーの業界団体である情報サービス産業協会(JISA)の横塚裕志会長と、「極言暴論!」でおなじみの木村岳史による対談の第2回。情報システムの過剰な作り込みで要件が複雑化する問題に議論が及んだ。

(構成は清嶋 直樹=日経コンピュータ


日経コンピュータ編集委員の木村岳史
日経コンピュータ編集委員の木村岳史
(写真:北山 宏一)

木村前回は、デジタルビジネスを推進するうえでの経営者の在り方について議論した。私は、いわゆるSE(システムエンジニア)と呼ばれる技術者の在り方にも、問題が多いと考えている。

横塚:私も長年社内SEを務めたが、SEがユーザー部門に負けてしまうということがよくある。SEを長年やっていると、「この要件はもっとシンプルにしたほうが、初期コストは安く、運用コストも抑えられる」と思うことはよくある。

 実際に、私は東京海上日動火災保険で「抜本改革プロジェクト」に関わった(関連記事:イノベーションと人材育成の研究 東京海上日動火災の「抜本改革プロジェクト」から考える)。ここでは、保険の商品設計や特約を抜本的に変えることも含めて、業務もシステムも「シンプルに」ということを徹底したつもりだ。

 だが、今になって考えると、シンプルさを徹底できなかったこともあった。SEは「多少業務が変わるかもしれないが、この要件はもっとシンプルにしましょう」と提案する。でも、ユーザーからは「これまでと同じことが全部できないと、業務が回らない」と反論されてしまう。

 中長期的に見たら、SE側の主張に理があると思うのだが、ユーザーに押し切られたことが無かったわけではない。