第三者によるウェブサイトのドメイン名の不正使用をいかに差し止めるか。根拠となる法律は、商標法と不正競争防止法の二つ。過去の判例が指し示すように、どちらの法律で何を訴えるかを明確にする必要がある。

 自社の商号、商品、サービスなどの名前が、第三者のウェブサイトのドメインに使用されている場合、どうやって差し止めるか。今回は、この点に関する裁判例を見て行こう。取り上げる裁判例のそれぞれの原告は、ドメイン名だけでなく商標などの使用差し止めも請求しているが、この点については割愛する。

 まず、大阪地方裁判所が2011年6月30日に判決を出した「モンシュシュ事件」を見てみよう。

 この件で争いになったのは、「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」という商標で、「私のお気に入り」というフランス語だ。この商標を持ち、バレンタイン用チョコレートにこの商標を使い製造販売していたゴンチャロフ製菓は、Mon cher(モンシェール:当時の商号はモンシュシュ)が商標を侵害しているとして、使用差し止めを求めた。

ドメインの商標的使用が争点

 モンシェールは、「Monchouchou/モンシュシュ」などの標章を、店舗表示、商品の包装、広告などに使用しており、自社のウェブサイトのドメイン名として、「mon-chouchou.com」を使用していた。

 商標権侵害が成立するには、単に、他人の商標が商品に記載されているだけでは足りず、「商標的使用」がなされていることが必要だ。商標には、三つの大きな機能がある。

 同一の商標を付した商品・サービスは同一の製造者などに由来することを示す「出所表示機能」、同一の商標を付した商品・サービスは同一の品質を有することを示す「品質保証機能」、商品・サービスを宣伝する「宣伝広告機能」だ。このような機能を果たす目的での使用が「商標的使用」となる。

 モンシェールは、ドメイン名としての使用は商標的使用ではない、と争った。しかし裁判所は、ドメイン名がモンシェールの保冷バッグや包装用紙袋に表記されているほか、モンシェールの包装箱風に着色されたトラックの車体広告にもロゴとともに記載されており、モンシェールの商品や事業の宣伝広告機能を発揮しているとした。

 また、モンシェールがウェブサイト上で自社商品の情報を提供し、注文を受け付けていることから、このドメインはモンシェールの商品やサービスの出所識別標識としても使用されているとした。以上の点から、このドメインは商標的使用がされているとして、ゴンチャロフ製菓が要求していた使用差し止めを認めた。

 次に大阪地裁が2006年4月18日に出した判決「ヨーデル事件」を見てみよう。この裁判では「YODEL/ヨーデル」の商標を持ち、便秘治療剤を製造する藤本製薬が、医薬部外品を販売するエスロクの商標侵害について使用差し止めを求めた事件だ。