前回まで、「スコープマネジメント」「要件確度のマネジメント」という2つの観点のマネジメント手法について説明しました。今回は、実際のプロジェクトにこの手法を適用した事例を基に、プロジェクトの課題に対してどのような工夫をし、チェック結果を活用するのかについて紹介します。

 取り上げる5つの事例は以下の通りです。1つずつ解説していきます。

【スコープマネジメント】

  • 事例1:要件量の増減を効率的に把握したい
  • 事例2:要件定義の進捗状況を把握したい

【要件確度のマネジメント】

  • 事例1:要件に抜け漏れがあることをユーザー・ベンダー間で共有したい
  • 事例2:検討が不十分なことを見積もりに反映したい

【スコープマネジメント×要件確度のマネジメントの併用】

  • 事例:要件の確度を高めながら要件量を調整したい

スコープマネジメントの事例1
要件量の増減を効率的に把握したい

 あるプロジェクトチームのプロジェクトマネジャーたちは、過去に初期見積もりをユーザーと合意した後で、要件定義完了後の再見積もりでユーザーの予算を超える高い見積もりを提示して合意できなくなった経験がありました。そこで、見積もりの変動要因となる要件量の増減を要件定義中に定期的にチェックして、要件量の増加が見られた場合はユーザーとベンダーで要件を調整する運用を実施しました。

プロジェクトの課題

 要件量が増えたことを客観的にユーザーに説明するために、外部仕様を定量化できるファンクションポイント(FP)を利用して要件量のベースライン(初期見積もりの時点でのシステム要件から算出した要件量)を作成しました。ところが、システム部門のレビュー、ユーザー部門のレビューと要件量が増える可能性のあるタイミングが多く、要件量の増減を確認するために、定期的にFPを計測することに大きな負荷が生じることが課題となりました。