見積もりが終わった後の要件定義や設計でのマネジメント手法として「スコープマネジメント」「要件確度のマネジメント」を紹介してきました。この2つの手法を併用することで、より総合的に見積もりの変動をマネジメントすることができます。今回は、要件量と要件確度という2軸のマネジメントについて紹介します。

「要件量」と「要件確度」の2軸のマネジメント

 システム要件が見積時に合意した内容から大きく変動してしまう原因として、「ユーザーからの変更要求による機能の増減(要件量)」と「曖昧だった要求の内容が詳細に決まったことによる機能の増減(要件確度)」という2つの観点があることを前回までに説明しました。プロジェクトの状況により、どこに見積もりの変動要因があるのかが異なります。要件量と要件確度の2つのマネジメント手法を併用することで、プロジェクトがどういう状況にあるのかを把握し、効果的に改善のアクションを打つことができます。

 図1は、縦軸に要件確度、横軸に要件量の増減可能性(追加要求や検討課題の対応状況)をそれぞれプロットしたグラフです。要件確度と要件量の増減可能性の状況を2軸のマトリクスとして見える化すると、プロジェクトを4つのエリアに分類することができます。

図1●要件量と要件確度の2軸のマトリクス
図1●要件量と要件確度の2軸のマトリクス

 各エリアに位置付けられるプロジェクトがどのような状況であり、どのような対策を実施する必要があるかを(表1)にまとめました。右下のエリア(不確定×増減大)のプロジェクトは見積もりが変動するリスクが最も高く、左上のエリア(確定×増減小)になるとそのリスクは小さいといえます。

表1●プロジェクトの状況に応じた対策案
エリア 状況 対策案
不確定
× 増減大
ユーザーの要求を実現するために必要なシステム要件が明確になっておらず、要件変更も多く発生しており合意できていない ユーザーとベンダーでシステム要件の検討と詳細化をしていく
不確定
× 増減小
要件の確度が低いまま合意が進んでおり、システム要件を明確にしていく中で新たな要件が追加される可能性がある システム要件を明確にしていき、ユーザーとベンダーで認識齟齬がないかを確認していく
確定
× 増減大
システム要件は明確になってきているが、ユーザーからの追加要求や検討課題が収束しておらず、検討が完了していない ユーザーとベンダーでシステム要件の合意を進めていく
確定
× 増減小
十分な詳細度でシステム要件を合意できている