前回はユーザー・ベンダーが協力して実施すべき見積もりプロセスについて説明しました。システムの開発においては、ユーザーの漠然とした要望を、ユーザーとベンダーが協力しながら順次具体化、詳細化し、実現可能な要件に落とし込んでいきます。ここで問題になるのは、要件が確定していない状況でも開発計画の作成、見直しなどを行う必要があり、その際に将来必要となるコストの見積もりが必要になることです。

 今回は、前回触れた見積もりのプロセスを、実際にシステム開発のどのような時期に実施するのかについて説明します。システムの開発では、ユーザーとベンダーが共同で要件の確度を高めていくのに応じて、見積もりを複数回実施すべきであることに触れます。また、要件の確度と見積もりの精度に応じて、ユーザーがベンダーと締結する委託契約をどのような形態とすべきかについて説明します。

開発工程と要件の確度、見積もりのリスクの関係

 まず、システム開発を進め方の概要を見てみましょう。図1は、典型的なシステム開発の工程を示したものです。システム開発の進め方のモデルには様々なものがありますが、ここではウォーターフォール型といわれる、比較的歴史があり現在でも主流のモデルに沿っています。

図1●システム開発の工程(家づくりとの対比)
図1●システム開発の工程(家づくりとの対比)