前回はシステム開発の現場で誰もが陥りやすい見積もりの典型的な問題ケースを3つ紹介しました。今回はその中の「見積もりの基本ができていない」問題ケースを、さらに以下の2つの事例に分けて問題点と解決ポイントを詳しく説明します。
事例(1)ユーザー要求を具体的に確認せずに見積もった
事例(2)要件が粗い状況のまま一括請負で契約した
本連載ではいくつかの事例を使って説明します。事例に登場する人物のプロフィールを表1に示します。
登場人物 | プロフィール |
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山田さん |
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田中課長 |
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佐藤部長 |
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事例(1)ユーザー要求を具体的に確認せずに見積もった
システム開発には「何をどのように見積もるか」という基本的な見積もりの進め方(見積もりプロセス)があります。適切な見積もりプロセスを踏まずに見積もりを行うと、見積もり内容の誤りにつながります。
どのような状況だったのか?
山田さん:「X社から提案依頼があった営業支援システムについて見積もりました」
田中課長:「どんな方針で見積もったんだい?」
山田さん:「X社から具体的な要求は提示されませんでした。営業支援システムはどこもそれほど変わらないと思いますので、Y社の営業支援システムを1年前に構築したときの実績を基に見積もろうと考えました」
田中課長:「うーん…、じゃあ規模はどれくらいになったの?」
山田さん:「規模は見積もっていません。Y社の営業システムを構築した際には2000万円で開発したので、今回も2000万円以内で開発できると思っています」
田中課長:「移行や操作研修はどちらでやることになっているんだい?当社が実施するの?それともX社にやっていただくの?」
山田さん:「そこまで考えが及びませんでした…」