システム開発プロジェクトの成否を決める重要なプロセスの一つが「見積もり」であることは、論をまたないでしょう。しかし見積もりに関して、こうすれば確実に成功する、という“銀の弾丸”はありません。見積もりはシステム開発に携わる人たちにとって、大きな課題の一つとなっています。

 システム開発の見積もりを複雑にしている要因は多岐にわたります。本連載では、特に見積もりを複雑にしている事項の一つである「ユーザーとベンダー間の合意形成」に着目して、システム開発の見積もりの課題と解決策を解説します。

 本連載がユーザー(発注者)とベンダー(受注者)の健全な関係を醸成するきっかけとなり、システム開発プロジェクト成功の一助となれば幸いです。

システム開発の見積もりの難しさ

 見積もりがプロジェクトの成否を左右するのはなぜでしょうか?プロジェクトの失敗の多くは、過少見積もりによって必要なリソースが配置されず、進捗遅れや品質不良を引き起こしてしまうことに起因しています。過少リソースで頑張ってプロジェクトを運営しても、いずれ限界がきます。限界になってからリソースを追加しても時すでに遅し。当初のメンバーは疲弊しているため生産性は下がり、追加メンバーもすぐには期待通りの成果を出せない。進捗遅れや品質不良といった問題は拡大し、プロジェクトはさらに混乱をきたす。その結果、コストが膨れあがっていく…そんなプロジェクトをみなさんも見聞きしたり実際に経験したりしたことがあるのではないでしょうか。

 このような事態を引き起こさないためにも、妥当な見積もりを行い、適正なリソースを確保することが重要です。これが、プロジェクトを成功に導く第一歩となります。