前回は、“攻めのIT”を実施するための技術的な壁について説明した。今回は、AGC旭硝子(以下、AGC)が“攻めのIT”に取り組む上で、どんな組織文化の壁に直面しているかを紹介する。

 基幹業務や事務処理業務向けシステム開発や保守では、現状もしくは新たな業務を分析し、システムにマッピングする作業が主になる。信頼性や安全性、正確性が重視されるため、堅牢なアーキテクチャーのもと、ウォーターフォール型開発で計画的にシステムを構築することが多い。

 この場合、システムには厳格な統制を効かせる必要があるため、作業のプロセスが複雑になりがちだ。また、リスクが少しでもあるものは排除することが多い。AGCでも、国内およびアジア地域で事務処理を標準化したり、情報セキュリティガイドラインやシステム構築における品質管理プロセスなどを策定したりといった取り組みをしている。

 新しい技術や製品を取り入れるには、調査、検証、全社展開などの手間が掛かるため、「積極的に導入したい」という気運になりにくい。各部門が新技術を利用したいとしても、情報システム部門としては「標準化されていない」「リスクがある」「検証している時間がない」などの理由で、対応できない場合もあるのではないだろうか。AGCでも、クラウドサービスやそれをベースにした新技術を活用したいという社内からの利用要望が増えているが、十分に対応しきれていないのが現状だ。

 こういった社内の各部門の要望を素早く取り入れてシステムを開発するには、アジャイル型の開発プロセスが有効だ。だが、ウォーターフォール型開発に慣れた現状の人員や組織体制でどう実現するのか、明確な方法は現在でも見つかっていない。