ITを新ビジネス創出や収益拡大に生かす、いわゆる“攻めのIT”。AGC旭硝子(以下、AGC)も、クラウドを活用しながらこうした取り組みを始めている。この第4回と次の第5回は、AGCにおける攻めのITに向けたチャレンジの技術面、組織面についてそれぞれ紹介する。

 企業の情報システム部門は、基幹業務や事務処理などバックオフィス向けシステムの保守/運用を主業務としているケースが少なくないだろう。主に業務の効率化を目的とした、“守りを固めるIT”である。

 だが最近は、情報システム部門に対して「ITを活用して経営に貢献する仕組みを提案してほしい」という要望がより強まっている。AGCにおいても、ITを経営の武器にして各種業務の改革、新ビジネスモデルの創造を実現するという目標を立て、様々な施策を実施している。

 このような攻めのITには、従来とは大きく異なる技術が必要となる。新技術の獲得が、情報システム部門には大きな壁として立ちはだかる。

未経験のシステム開発を成功させるために

 攻めのITを実現するために、新技術をどう活用していくか。このテーマには、明確な答えがない。試行錯誤しながら答えを見つけ出すことが必要になる。また、進化の早い多様な技術を積極的に活用することも重要になるため、システム開発/改変のスピードも求められる。

 新しい技術を迅速に評価/導入しながら、試行錯誤を素早く繰り返してアイデアを検証する、といったことは、これまで多くの情報システム部門が経験してこなかっただろう。こうした取り組みを成功させるために、AGCでは中期的ビジョンや技術ロードマップと、短期的な製品/技術の採用とを組み合わせる必要があると考えた。

 中期的なビジョンとは、3~5年程度の期間で、情報システム部門の方向性や目標を示すもの。AGCの情報システムセンターは「マネジメント/ワークスタイル/業務の改革や、新ビジネスモデルの創造を実行する組織になる」というビジョンを掲げている。