前回、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を基幹システムに使うに当たって準備した、共通基盤について説明した。今回は次なる壁として、この基盤にいかに社内ユーザーを呼び込んでいくかについてお伝えする。

 次期の主要インフラにAWSを採用するという方針が決まってから、我々情報システムセンターは、製造部門や研究開発部門などいくつかの部署を対象に、AWSに関する説明会を実施した。そこでは、「AWSの超入門」「代表的なAWSのサービス」「AGC旭硝子におけるAWSの使い方(指針)」といった項目について説明した。

 反応は実に様々だった。「ぜひ、次期システムにAWSを使いたい」と言ってくれるユーザーもいれば、「コストが見合うのなら検討する」という慎重派のユーザーもいた。もちろん、「自分が担当しているシステムは、AWSでは実現できない」という人もいた。

社内からの相談が急増し「これはヤバい」

 いずれにせよ、説明会を通じて感じたのはクラウド技術に対するユーザーの熱意である。この新しい技術を使うことで、今までできなかったことができるのではないか。今困っていることが解決されるのではないか。そういう期待感を抱かせるのに十分な魅力が、AWSには確かにあるのだと思う。

 説明会の甲斐あってか、その後AWS利用の相談が社内から頻繁に舞い込むようになった。問い合わせは、「本当にシステム運用の負荷から解放されるのか」とか、「コストはどれくらい削減できるのか」といった一般的なものがほとんどだった。

 ただ新鮮だったのは、顔見知りのユーザーだけでなく、今まで全く連携していなかったような部署の社員が人づてにAWSのことを聞きつけて、我々情報システムセンターに連絡してくるケースが少なくなかったことだ。AWSの魅力が、部署の垣根を越えて伝わったようだった。

 それ自体は望ましいことだ。ただ、相談が増えるにつれ我々には「これはヤバい」という危機感が高まっていった。