これまで3回にわたり、米ABTパワーマネジメント(以下、ABT)が開発したリモート資産管理サービス(RAAMS)について、概要、成果などを紹介してきた。最終回となる本稿では、IoT(Internet of Things)を使ったサービスを実現する分析エンジンとルールエンジンについて、これまでの進化と今後の見通しについて説明する。
両者は機器の状態データを収集し、保守の最適化を図る上で、中核の技術である。さらに、データ収集、分析、活用による意思決定メカニズムは、設備機器の予防保守だけでなく、デジタルヘルス分野におけるアセスメントおよびリスク管理(重症化リスクの低減)サービスにも適用できることに言及する。
進化する意思決定エンジン
RAAMSは、クラウド上でバッテリーの状態(バッテリー液の充てんレベル、温度など)に関するデータを獲得し、分析することで、設備寿命と稼働性をめざましく改善させた。
これは、データ分析の進化と照らし合わせると、「アナリティクス 3.0」を採用しているといえる。「アナリティクス 1.0」は事実に基づくデータ分析、「アナリティクス 2.0」は予測分析を指すのに対し、「アナリティクス 3.0」はアクションを決定するための分析を意味する。
RAAMSは、収集したデータの分析から得られる知見やサービスを業務に生かして価値を創造する。まさに、アナリティクス 3.0が規定する「Prescriptive(アクションを提示するための)分析」のアプローチを実践したのだ。
これら四つの要素を含む科学的なアプローチ、すなわち標準的なプロセスや規則に基づく履歴データの処理によって、示唆や洞察を獲得できる。その方法はスケーラブルでなければならない。サービスを拡大する過程で、機械学習を中心とした手法によって自動化していく必要がある。
ルールエンジンは、元々は判定、評価、推奨といった大量の処理を自動化するものだったが、データの文脈に沿った最適な意思決定を担う方向に進んでいる。複雑化するであろう業務活動の中で、新たな発見を業務やサービスに組み込んで顧客価値を創造するには、ビジネスや業務プロセスに関する理解を基に意思決定することが重要になる。
最新の意思決定エンジンでは、ルールを変更する場合に、関係するルール、対象となるデータを容易に探索し、変更のインパクト分析を実施したりシミュレーションしたりする機能を備えている。また、様々な業務担当者とのコミュニケーションが可能なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)機能、ビッグデータ分析によってルールを自動的に導出する機能を持ち、意思決定のモデル作りまでをサポートするほどに進化している。