いよいよ改正派遣法の成立が迫っている。システム開発や保守、運用──。これらの現場に何が起こるのか。どういった準備が必要になるか。それぞれのケースごとにポイントをひもとく。

 派遣技術者がシステム開発や保守、運用の現場を支える構図は、長年にわたってIT業界に根付いている。今回の法改正によって、多方面にインパクトが及ぶと予想される。

 ここでは技術者派遣に関わる四つの現場を例に、法改正の影響と対策を検証しよう。

CASE1:迅速な保守が困難に

 ケース1として、『派遣技術者が特定の業務システムを長年保守しているユーザー企業A社の情報システム部門』を想定する(図1)。法改正後にA社は、熟練技術者の交代を余儀なくされ、迅速な保守開発が困難になるかもしれない。日本総合研究所の大谷和子法務部長は、「法改正の影響を一番心配すべきなのは、保守フェーズ」と指摘する。

図1●ユーザー企業の保守業務における影響
図1●ユーザー企業の保守業務における影響
熟練の派遣技術者をリリース
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 懸念点は大きく二つある。一つは、受け入れている技術者の派遣元が事業を継続できなくなること。もう一つは、派遣元が無期雇用する人員でない限り、最長3年しか同じ職場で働けないことだ。

 前者については、特定労働者派遣の廃止に伴う許認可制への一本化が大きい。日経コンピュータ システム部長会の会員向けにアンケート調査(2014年2月)を実施したところ、4割のユーザー企業が特定労働者派遣を受け入れていることが分かった。受け入れ時期を「過去5年間」に広げると、その割合は6割を超える。

 一方、後者に関しては、これまでシステムの隅々まで知り尽くして保守業務に当たっていたベテラン派遣技術者を交代させざるを得ない、といった事態を招く。「制度対応などのスピードが遅くなる恐れがある」(大谷部長)。多くのユーザー企業にとって、ケース1は他人事ではない。

 ではユーザー企業はどのような対策が可能だろうか。まずは派遣元に対し、(1)事業を継続できるか、(2)現在派遣されている技術者は無期雇用か否か――を確認する。その結果を踏まえて「3~5年といった中長期の人員計画を立てる」(大谷部長)ことが必要になる。

 もし技術者の交代が不可避であれば、ドキュメントの整備やナレッジの棚卸しなど、システムの属人化を撤廃する仕組みを早急に整えなければならない。なお、技術者の交代を避けるために安易に委任型の契約に切り替えると、A社の社員が技術者に直接指示を与えることができなくなるので要注意だ。