ITサービスの好事例集「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」は、運用改善・オペレーションマネジメントの仕組みとして大変優れている。だが、IT以外の業種・職種では活用はおろか、認知もされておらず実にもったいない。

 この連載では、ITの運用以外の職場も例にとり「そもそもITILって何?」「ITILを活用するとどんないいことがあるのだろう?」を様々な視点で分かりやすく解説する。今回は第5話で一度取り上げた「インシデント管理」について、そのメリットを理解しよう。

【「インシデント管理って何のためにやるの?」】
新入社員 山中麻衣香の疑問

 中堅化粧品会社「ルミパル」の通信販売部門に勤める山中麻衣香(やまなか まいか)。この4月に入社したばかりの、ピカピカの新入社員だ。麻衣香の仕事は電話対応。毎日、お客様から化粧品の注文や問い合わせ、時にクレームや要望なども受けて対応している。

 ある日の午後、主任の京子(きょうこ)からこんな指示を受けた。

 「通信販売部のインシデント管理簿を作ってもらえないかな?メンバーの皆が、お客様から受けた問い合わせ、クレーム、要望なんかを記録して一元管理できるようにするの。よろしくね」

 「は…はい。頑張ります!」

 インシデント管理…って、一体どんなことをするのだろう?その場でインターネットで「インシデント管理」を調べ、帰りがけに書店に寄ってサービスマネジメント関連の本を購入して読み漁った。

 どうやら、トラブル、クレーム、要望など、サービスの提供を阻害、もしくはサービスの品質を低下させるような事象(インシデント)を早く解決し、安定してサービスを提供できるようにする取り組みのようだ。

 「インシデント管理簿…京子さんは、とりあえずエクセルで作ってくれればいいからって言っていたけれど、新人の私にできるのかしら?」

 顔を曇らせる麻衣香。そもそも…

 「インシデント管理って、一体何のためにやるのかしら?」

 麻衣香は窓の外をぼんやり見つめて、そっとつぶやいた。