ITサービスの好事例集「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」は、運用改善・オペレーションマネジメントの仕組みとして大変優れている。だが、IT以外の業種・職種では活用はおろか、認知もされておらず実にもったいない。

 この連載では、ITの運用以外の職場も例にとり「そもそもITILって何?」「ITILを活用するとどんないいことがあるのだろう?」を様々な視点で分かりやすく解説する。今回は「構成管理」を理解しよう。

図1●今回のテーマは、業務やサービスを提供するために必要な資産を正確に維持、管理する「構成管理」
図1●今回のテーマは、業務やサービスを提供するために必要な資産を正確に維持、管理する「構成管理」
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【「ええと、それどこにあったっけ…」】
総務部ベテラン社員 高倉の焦り

 オフィス機器販売代理店「ミライ商会」の本社総務部に勤める、ベテラン事務員の高倉末次、46歳。高倉は、全国の営業所の賃貸ビル、社有車や駐車場などのファシリティを管理している。

 ある朝、高倉は新聞でミヤタ自動車のコンパクトカー「イプシロン」の特定車種が大量リコールの対象になっていることを知った。イプシロンは、ミライ商会の社有車としてそれなりの数を購入して使っているはずだ。しかし、リコール対象の車種がどの営業所にどれだけあるのかは、把握していない。

 そもそも、ミライ商会では社有者の車種選定も管理もほとんどが地方の営業所任せ。本社の高倉が選定・管理しているのは、配送センターやショールームなど本社直轄の一部の施設に過ぎない。さらに、営業所によってリース会社が異なるなど、社有車の利用形態もバラバラだ。

 そうはいっても、事故を起こす可能性のある車に「ミライ商会」の看板を掲げて走らせておくわけにはいかない。総務担当役員は、「本社総務部が全ての社有車を洗い出し、すぐ対応しろ」と息巻いている。急いで対象車種のありかを特定して対策するよう促したいのだが、一体どうしたらよいものか…。

図2●どの営業所に、どの車種があるのか不明…
図2●どの営業所に、どの車種があるのか不明…
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