ITサービスの好事例集「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」は、運用改善・オペレーションマネジメントの仕組みとして大変優れている。だが、IT以外の業種・職種では活用はおろか、認知もされておらず実にもったいない。

 この連載では、ITの運用以外の職場も例にとり「そもそもITILって何?」「ITILを活用するとどんないいことがあるのだろう?」を様々な視点で分かりやすく解説する。

 今回は、業務やサービスの内容、手順などを変えるための「変更管理」を取り上げる。変更作業の手順や方法を標準化しておき、手早く確実に実行し、業務やサービスへの影響を最小限にとどめる。

【「良かれと思ってやったのに…」】
新入社員 山中麻衣香の落胆

 化粧品会社の通信販売部門に勤める、新入社員の山中麻衣香(やまなか まいか)。今日も元気よく、お客さんの注文を電話で受け付ける。そんな彼女の仕事の1つが、お客さんから電話で受け付けた注文の内容を、表計算ソフトのエクセルで作成した専用フォーマットのシートに記入して、社内の物流センターに配送指示をかけることだ。

 ところが、このエクセルシートの使い勝手がなかなか悪く、オペレーターの入力漏れや誤記による発送ミスといったトラブルが、たびたび発生していた。

「よしっ、頑張って改善しよう!」

 ようやく仕事にも慣れてきた麻衣香。やる気満々で、業務改善に乗り出した。麻衣香は、オペレーターと相談しながらフォーマットを使いやすいように改変した。試行錯誤を繰り返し、ようやく完成!使用を開始した。

 ところがその翌日、物流センターのセンター長から怒りの電話が…

「勝手なことするなよ!」

 聞けば、物流センターでは独自にプログラムを組んで、申請書の内容の読み取りと配送用のラベル作成を自動化していたとのこと。エクセルシートのフォーマットが変わったため、そのプログラムが使えなくなってしまったらしい。せっかく、良かれと思ってやったのに…

 図1●自主的な業務改善の取り組みが他部門の業務に悪影響を及ぼしてしまうことがある
図1●自主的な業務改善の取り組みが他部門の業務に悪影響を及ぼしてしまうことがある
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