第3回では、DCのセキュリティについてどのような技術やシステムが使われているかを紹介する。各社が最も重視するのは「人」。内部犯行や関係者を装った不審者をいかに防ぐかに力を注ぐ(写真1、2)。最も厳重な施設の一つ、空港と同じ「全身スキャナー」技術も取り入れるなど、人に対するセキュリティ強化は厳格になる一方だ。
「ネットワークなどのセキュリティ対策は当たり前。最も難しいのは、人による犯行を防ぐことだ」。野村総合研究所(NRI)のDCマネジメント部上級の嶋田浩二氏はこう語る。
この言葉通り、最新鋭DCのセキュリティ対策で各社が焦点を当てているのは人だ。入館者に対して様々な設備を使って、不審物の持ち込みや不審者の侵入を防ぐ対策を講じている。各ベンダーが運営するDCでは、サーバールームにたどり着くまでに、複数のセキュリティチェックを受ける必要がある。
各ベンダーはDC内へ、USBメモリーやスマートフォンなどに付属する記憶媒体の持ち込みを警戒している。近年、こうした小さな記憶媒体による情報の持出によるトラブルが増えているためだ。
空港並み、「全身スキャナー」を導入
NRIが2012年に開設した「東京第一データセンター」では、入館時には身分証明書を提示する必要がある。その後、専用の端末で顔写真を撮影し、入館者として登録する。登録時には、静脈認証技術を用いた生体認証による入退室監視システムが設けられている。
NRIの嶋田氏は、東京第一DCについて「空港並みのセキュリティレベルを実現している」と話す。その一例が「3Dホログラフィック・ボディスキャナー」(写真3)。いわゆる「全身スキャナー」だ。米国の空港で導入の是非を巡って大論争になり、日本でも2020年の東京五輪に向けて導入が検討されているという。DCで持ち物を一つずつ検査するスキャナーは一般的だが、全身スキャナーを導入しているDCは極めて異例だ。
NRIの東京第一DCでは入館者が一人ずつ、両手を挙げた格好でゲートの中に入る。金属物など持っていないか電波を使ってチェックされる。記者も試しに、約1センチほどの小さなクリップをポケットに入れて全身スキャンを試したところ、見事にひっかかった。写真には小さなクリップが鮮明に写っていた。