2015年6月19日、労働者派遣法の改正とセットで、一つの新法案が衆議院を通過した。「同一労働同一賃金推進法案」である。“同じ労働ならば同じ賃金を支払う”ことを推進し、正社員と派遣社員との賃金格差の解消を狙ったものだ()。改正派遣法の強行採決を避けたかった与党が、民主党や維新の党が今国会で提出していた同法案の修正採決を提案、維新の党がこれに応じた。

図●「同一労働同一賃金推進法案」が目指す内容
図●「同一労働同一賃金推進法案」が目指す内容
[画像のクリックで拡大表示]

 同一労働同一賃金推進法案は、雇用形態による格差を是正するための法制上の措置などを3年以内に講じることとし、事業主にも協力を求める。基本的に努力義務を求めるもので、強制力には乏しい。しかし、「たとえ形ばかりだったとしても、法律ができることそのものには価値がある」と、派遣法などに詳しいピー・エム・ピーの鈴木雅一代表取締役は語る。

遅れる日本の取り組み

 鈴木氏がこのように語るのは、「日本は先進国の中で唯一といっていいほど、同一労働同一賃金の取り組みで遅れをとっている」(鈴木氏)からだ。2008年には経済協力開発機構(OECD)が日本に対して、正規社員と非正規社員との格差を是正するように勧告を出したこともある。国際労働機関(ILO)憲章は、その前文で同一労働同一賃金に触れており、基本原則の一つとされる。しかし、日本での取り組みは決し進んでいるとは言えないのが実態だ。

 過去の裁判例では、臨時社員の賃金が同じ勤務年数の正社員の8割以下だった場合、賃金格差の許容範囲を超えるという見解が示されたことがあるという。裏返せば2割までの格差であれば、許容されるということだ。決して、小さな差ではない