写真●決済サービスを手がける米ペイパルは米国時間2015年7月20日、米ナスダック市場に13年ぶりに再上場を果たした
写真●決済サービスを手がける米ペイパルは米国時間2015年7月20日、米ナスダック市場に13年ぶりに再上場を果たした
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 突如として「FinTech(フィンテック:金融×ITの造語)」市場に強大な企業が降誕した。その企業は世界203カ国と地域で利用される決済サービスを展開し、100通貨以上の決済に対応。年に1度以上利用するアカウント数は1億6900万を超え、年に40億件の取り引きをさばく。FinTechといった言葉が生まれるはるか昔から金融とITの融合を体現し、人々のコミュニケーションツールと決済を組み合わせたイノベーションを起こしてきた。

 FinTechという言葉が20年前に存在していたなら、「FinTechの始祖」と呼ばれていたかもしれない米ペイパル(PayPal)。同社は米国時間2015年7月20日、13年の時を経て米ナスダック市場に再上場し、独立企業として再出発した(写真)。懐かしいティッカーシンボル(銘柄コード)「PYPL」を目にした古参の証券会社社員は感慨深かったに違いない。

 2002年10月にEC(電子商取引)事業を手がける米イーベイ(eBay)によって15億ドル(当時の円換算で1780億円)で買収されたペイパルはその後も事業の拡大を続け、再上場でその時価総額は450億ドル(約5兆5000億円)に達した。おおかたの予想通り、古巣のイーベイの時価総額340億ドル(約4兆2000億円)を優に超える巨大企業に成長していた。ペイパルの社長兼CEO(最高経営責任者)のダン・シュールマン氏は「この上場はペイパルが新しい扉を開き、次章に入ったことを意味する」とコメントを寄せた。

 ペイパルはグローバル市場で今も昔も比肩なき存在感を示し続けてきた。

 ペイパルが初めてナスダック市場に上場した2002年2月、米国の市場はドットコムバブルの崩壊で完全に冷え切っていた。1999年のIPO(新規株式公開)件数は486件だったのに対し、2001年は83件にまで急落。IPOの時期としては誰しもが避けたい最悪なタイミングだった。

 だが、ペイパルは上場に踏み切った。公募価格13ドルに対し、初値は19.29ドル。当時、ネットバブル崩壊後でほとんど唯一のIPO成功企業と呼ばれた。その後、イーベイに売却したペイパルの創業メンバーは、投資家やシリアルアントレプレナー(連続起業家)としてシリコンバレーを席巻し、「ペイパルマフィア」と呼ばれた。