EUにおける現行(2009年制定)の通信規制の枠組みでは、枠組指令で「インターネットの自由」の原則を規定したうえで、ユニバーサルサービス指令により、各加盟国の国家規制機関(NRA)は「透明性」の確保や「最低限のサービス品質」の要件を事業者に課すことができると定めている(表5)。ただし、それら指令類で「ネットワーク中立性」という言葉は使われておらず、枠組指令の表現も「NRAおよびBERECは、エンドユーザーによる情報へのアクセスと、ユーザーに対する配信、およびユーザーが選択したアプリケーションやサービスを運用する能力の促進によって、EU市民の利益を増進すべきである(第8条4)」という一般的なものである。

表5●EUのユニバーサルサービス指令におけるネット中立性の該当部分
表5●EUのユニバーサルサービス指令におけるネット中立性の該当部分
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 ECは2012年5月、エンドユーザーに対する透明性改善の勧告(法的拘束力はない)を提案すると発表した。その時点では、法律を通じてネット中立性を規制することは検討しない方針だった。しかしECは2013年5月に立場を変更して、インターネットトラフィックの反競争的なブロッキングやスロットリングの禁止を提案した。