第1回の表1で示したように、FCCが2010年12月に策定したネット中立性規則は裁判になり、2014年1月にワシントンDC連邦控訴裁が同規則の一部を無効とする判決を下した。FCCの2010年規則の内容と無効とされた義務付けは表3の通りである。

表3●FCCの2010年のネット中立性規則と判決内容
表3●FCCの2010年のネット中立性規則と判決内容
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 米国のネット中立性問題の特徴は、何よりも10年に及ぶ論争の長期性にある。その長期性は、現行の連邦通信法のサービス分類が「電気通信サービス」と「情報サービス」という単純な二分法であり、複雑化するインターネット利用の様々なケースを適切に処理できないという限界に起因している。その法的な限界を突いて、ベライゾンなどの当事者は、FCC規則を「規制管轄権の有無」という論点から提訴した。

 2014年1月の判決はFCCの規制権限は認めたものの、ブロードバンドサービスをFCC自身が2000年代に「情報サービス」と区分し、伝統的な電気通信(コモンキャリア)サービスから除外したことを挙げて、いまさらコモンキャリアと同様の規則を課すのは不当であるとして、その再考をFCCに促したものである。

 FCCは判決を受けて、2014年5月に新たなネット中立性規則の案を諮問した。同規則案では、「非差別的取り扱い義務」を「商業的に不合理な慣行の禁止」に変更した。「ブロッキングの禁止」の条項は残したが「最低限のアクセスを提供すればよいと解釈する」というただし書きを付けた。各条項が具体的に何を禁止するのかは判然としない点も多いが、全体的に従来の規制よりも緩やかな提案であった。