FCC(連邦通信委員会)は2015年2月26日、ネットワーク中立性に関する新規則を採択した。ネット中立性を巡っては欧州でも2010年代から議論が続いている。以前は日本でも「インフラただ乗り論」として話題になった。ネットワーク中立性とは何かを振り返り、米欧日の最新事情を解説する。

 米国と欧州において、いわゆる「ネットワーク中立性(Network Neutrality)」を巡る規制議論が落ち着きのない展開を見せている。ネットワーク中立性(以下、ネット中立性)の問題は、米国の通信政策の「喉に刺さった骨」とも言うべき存在であり、2000年代半ばから議論が続いている。この2月26日にFCC(連邦通信委員会)が採択した新規則(詳細は後述)も「新たな法廷闘争の開始を告げる合図にすぎない」と見られている。

 欧州も例外ではない。当初は「我々には関係のない規制アジェンダである」という立場を取っていたが、2010年代に入ると状況が変わり、米国と同様、欧州連合(EU)レベルの規制の在り方を巡る議論を続けている。そのような問題のグローバルな広がりと解決時間の長期化により、ネット中立性の認知度は以前より高まってきた。特に米国では、米ウォール・ストリート・ジャーナルのような経済紙のみならず、USAトゥデイやニューヨーク・タイムズなどの一般紙にも、関連記事が度々掲載されている。しかし、用語のみならず、論争の焦点の曖昧さ(よく言えば多様性、網羅性)により、米国以外ではICT業界でもネット中立性の本当の意味を理解している人は少数だと思われる。