日本で一般からのインターネットへの接続が開放されたのは、1994年7月のことだった。すぐにネット接続を担う民間のプロバイダーが次々に立ち上がり、インターネットを使いこなすことが、万人にとって必須の基礎知識となった。それから21年が過ぎ、今や「インターネット」という言葉を使うことすら珍しくなったほどに、ネットは普及した。ネットでは、ネット以前には考えられなかったほどの膨大な情報が流通しており、私たちは意識せずにそれらの情報を前提として生活するようになっている。

 だが、大変奇妙なことに、ここに来て自由な情報の流通を阻害するかのような社会的な動きが次々に表面化してきている。別に連動したものではなく、1つひとつは独立した問題だが、全体として見るとまるで日本社会が情報の流通を阻害し、社会の風通しを悪くする方向へと舵を切ったかのように見える。

 個々の問題が独立しているからこそ、この問題は重大だ。我々1人ひとりが、情報に対して無関心無感動になっていることの表れかもしれないからだ。情報の流通が悪くなった社会は停滞し、やがて衰退するのである。

 今回はまず、レンタルショップTSUTAYAを運営するカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営委託を受けている公立図書館の事例を取り上げる。

賛否両論の中にあるCCCの図書館運営

 2013年4月、佐賀県武雄市立図書館がリニューアルした。このリニューアルは大きな話題を呼び、同時に波紋を広げている。指定管理者として、レンタルショップTSUTAYAを運営する企業のカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)を起用。CCCは、図書館施設に、コーヒーチェーンのスターバックスを併設すると同時に、コーヒーを飲みながらの図書閲覧を可能にし、さらにCCCの運営する蔦屋書店を同居させて、「本を借りることも買うこともできる場所」にした。加えて所蔵する書籍を入れ替えて、独自の書籍整理手法を導入したのである。

 現在、CCCの図書館運営にはさまざまな批判が出ている。「コーヒーを飲みながらの閲覧では、所蔵する書籍が汚損する可能性がある」「コーヒーショップの喧噪と、図書館はなじまない」、さらには「所蔵する本が偏っている」「新たに購入した書籍の一部はTSUTAYA経由の古本の不良在庫ではないか」「リニューアルに当たって貴重な郷土資料が破棄された」「TSUTAYAと競合するCDやビデオ貸し出しを廃止した」などなど。その一方で、「図書館が行きやすい明るい場所になった」「来館者人数が大幅に増えて地域が活性化した」と評価する声もある。武雄市立図書館リニューアル1年目の2014年4月、CCCは武雄市立図書館の入館者数がリニューアル前の3.6倍、貸し出し利用者数が2倍に増加したとするプレスリリースを出した。