前回説明した通り、通信衛星コンステレーションには、巨大な初期投資、光ファイバー網に対して小さい通信容量、そして少ない潜在ユーザーという、事業展開に対する3つの障壁が存在する。しかし、ワンウェブの創業者であるグレッグ・ワイラーは、その通信衛星コンステレーションに世界の南北格差、なかんづくネット接続の有無による情報格差を是正する可能性があると見ている。

 ワイラーは技術分野でのシリアル・アントレプレナーだ。最初に起業したコンピューター部品メーカーを1999年に売却し、次の事業として選んだのが発展途上国におけるネット接続だった。そのために彼は、アフリカ・ルワンダにネット・プロバイダーのテラコムを設立した。しかし、ここで彼は実際に光ファイバー網を敷設した経験から、道路や電力のような基礎的な社会インフラも不充分な発展途上国において、通信インフラを地上に構築することがいかに難しく、コストがかかるかを知った。

 こうしてワイラーの目は宇宙からのネット接続に向くことになる。衛星からの電波でネット接続が実現するならば、地上側インフラは送受信装置を用意するだけでよい。彼はテラコムを売却し、2007年に通信衛星コンステレーションによりネット接続を実現するための会社O3bネットワークスを、チャネル諸島ジャージー島に設立した(英仏海峡に位置するチャネル諸島は、英王室属領。外交・防衛は英国が権利を持つが、行政は英国から独立している。タックスヘイブンが主要産業となっている)。

ワンウェブのグレッグ・ワイラーCEO(最高経営責任者)(ワンウェブのホームページより)
ワンウェブのグレッグ・ワイラーCEO(最高経営責任者)(ワンウェブのホームページより)
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