米国のGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などの測位衛星システムによる測位精度は、好条件でも4メートル程度だ。準天頂衛星システムは2種類の補強信号で誤差を補正して、この精度を向上させる。
補強信号の一つは、現在「L1-SAIF」と呼ばれている信号で、誤差を2メートル程度まで小さくする。もう一つの補強信号は「LEX」という信号で、センチメートル級の測位を可能にする。これらの名称は現在の試験段階のもので、本格的なサービス開始時には別の名称が付くことになるだろう。
こうした補強信号の利用方法は、一般財団法人 衛星測位利用推進センター(SEPAC)を中心に研究が進んでいる。SPACホームページには、実証テーマの一覧が掲載されている。「補強信号で実際にどの程度の精度が得られるか」というような基礎的な研究から、実際のワークフローへの応用まで、100以上のテーマで実証が進んでいる。
その中には、これまでは考えもしなかったよう応用事例も含まれている。今回は、そのうちの二つを紹介しよう。
ボランティアや子どもが防犯地図を作成
警察庁 科学警察研究所は、地域の防犯ボランティアや、犯罪被害者になりやすい子どもたち自身が、「このあたりが危ない可能性がある」ことを示す防犯地図を作成する研究を進めている。
防犯地図作成の道具は、現在位置を記録するGPSロガー、声を記録するICレコーダー、デジタルカメラの三つ。ロガーで位置を記録しつつ、ICレコーダーで「ここがどういう場所か、なぜ危ない可能性があるのか」などを話して録音。要所で写真を撮影する。