現在位置を示すスマートフォンのアプリ
現在位置を示すスマートフォンのアプリ
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 現在我々は、ごく当たり前のように日常的に衛星測位システムを使用している。カーナビゲーションシステム(カーナビ)は自動車の標準装備になりつつあるし、スマートフォンでもナビゲーションアプリが利用できるようになった。

 便利に使えるこうしたナビ機能の背後には、米国やロシアが運用する何十機もの衛星で構成される、巨大システムが存在している。日本も、日本を中心に東アジア地域をカバーする「準天頂衛星システム(QZSS)」の整備を進めている。2017年には3機の衛星を打ち上げ、2018年にはサービス提供を開始する予定となっている。

 QZSSは、それ単体で測位を可能にするわけではなく、米国のGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を補完するものだ。同時に、日本における衛星測位の精度を向上させる「補強信号」という信号を送信することになっている。

 現在、測位衛星の精度は最良で4メートル程度。しかし補強信号を使うと、精度はセンチメートル単位にまで向上する。ロボットや人工知能(AI)の進歩と同様、測位衛星からの補強信号をいかに使いこなすかが、2020年代の社会を大きく左右することになるだろう。

 今回は4回にわたって、測位システムがどのようなものか、補強信号によって今後どのような展望があるのかを見ていくことにする。

米国にロシアに欧州に中国、そしてインドと日本

 普段我々が主に使用している測位衛星システムは、米国が運用するGPSだ。GPSは、専用の衛星24機と、それらの衛星を管制する地上系のシステムで構成されている。衛星の故障に備えて軌道上に配置している予備衛星も含めると、衛星の総数は30機にもなる。

 この米国のGPSに加えて、24機の衛星からなるロシアの「グロナス」という測位衛星システムも運用されている。どちらももともとは1970年代に軍用に開発されたものだが、現在は無償で使える民間向け信号も送信している。カーナビもスマートフォンも、その信号を利用して現在位置を算出しているわけだ。