技術開発で激しく争う、スペースXとブルー・オリジン。ただ、米国の宇宙ベンチャーは、この2社だけではない。

 小型の実験装置や衛星を国際宇宙ステーションに運んで実験や放出を行っているナノラック、多数の小型地球観測衛星を打ち上げて、いつでもどこでも地表を高精度で観測可能にすることを目指しているスカイボックスやプラネット・ラボ、折り畳んで打ち上げて軌道上で大きく風船のように膨らます有人ステーションを開発しているビゲロー・エアロスペースなど、数多い。

ビゲロー・エアロスペースは2016年、国際宇宙ステーション(ISS)に同社の有人モジュール「BEAM」を接続して2年間の予定で運用試験を開始する。BEAM試験モデルの前で談笑する創業者のロバート・ビゲロー(右)とロリ・ガーバーNASA副長官(右)(出所:NASA/Bill Ingalls)
ビゲロー・エアロスペースは2016年、国際宇宙ステーション(ISS)に同社の有人モジュール「BEAM」を接続して2年間の予定で運用試験を開始する。BEAM試験モデルの前で談笑する創業者のロバート・ビゲロー(右)とロリ・ガーバーNASA副長官(右)(出所:NASA/Bill Ingalls)
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 米宇宙ベンチャーがここまで伸びているのには、2つの理由がある。米政府の手厚い産業育成策と、1960年代以来のぶ厚い技術的資産の蓄積だ。今回はこの2つを、スペースXとブルー・オリジンを例に見ていくことにする。

民間宇宙船の出現を促すNASAの「COTS」と「CCDev」

 米政府は1970年代から宇宙空間の商業利用を目指して、宇宙ベンチャー育成に取り組んできた。

 初期の“武器”はスペースシャトルだった。スペースシャトルは、宇宙輸送コストを低下させることを目的に1972年から開発が始まった。宇宙に行くのに必要な運賃を安くすることで、宇宙産業を立ち上げようと狙ったのである。この狙いは、1981年から運行を開始したシャトルが思ったほど低コストではないどころか、高コストかつ危険な乗り物であったために潰えた。