官邸落下事件は、最新ITは消費者の生活を便利にする可能性を秘める半面、悪用されれば消費者を脅かす存在になるリスクが常につきまとうことも浮き彫りにした。

 ネットの力を悪用したサイバー攻撃がなくならないように、ドローンを“悪玉”に仕立てようと試みる輩はこれからも出続ける——。性悪説に立ち、技術の力で悪玉ドローンによる攻撃から身を守る手立てがあるはずだと一部企業が挑戦を始めている。サイバー攻撃同様、100%完璧に防御することは難しく、無尽蔵にコストをかけるわけにもいかない。だが、低予算である程度防げるのであればその価値は高い。

 現在開発を進める綜合警備保障(ALSOK)と沖電気工業(OKI)を訪れ、その実力がいかほどなのか確かめた。

飛行音に耳にそばだてれば

写真1●ALSOKが提供するドローン対策システムでは、音響センサーを使ってドローンのプロペラ音を検知する
写真1●ALSOKが提供するドローン対策システムでは、音響センサーを使ってドローンのプロペラ音を検知する
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 「ドローン悪用による被害は今後ますます増加するはず。だから我々は、“ドローン・ハラスメント”に対抗する手段を打ち出すことにした」。

 ALSOK商品サービス企画部商品サービス企画課の伊藤俊輔主任は、いち早く技術開発に乗り出した背景をこう説明する。単なる嫌がらせや愉快犯ばかりでなく、官邸落下事件のようなテロを目的とした悪質なドローン飛翔が今後相次ぐとみている。

 同社は現在、画像解析や電波検知など悪玉ドローンをいち早く発見するいくつかの技術開発に取り組んでいる。中でもすでに商品化できているのが音響センサーを活用したシステムである(写真1)。

 ドローン先進国である米国のベンチャー企業ドローンシールドが開発したハードやソフトを応用。世界各国で200台以上の販売実績があるもので、米国ではボストンマラソンなどテロを防ぎたい大規模なイベントで幾度も採用されている。

写真2●ALSOK 商品サービス企画部商品サービス企画課の伊藤俊輔主任。「ドローン・ハラスメント」対策システムの必要性を語る
写真2●ALSOK 商品サービス企画部商品サービス企画課の伊藤俊輔主任。「ドローン・ハラスメント」対策システムの必要性を語る
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 基本原理は、ドローンのプロペラ音の音響パターンをセンサーで検知し、すぐさま警報を鳴らすというものだ。世界中の様々なメーカーがいくつものドローンを販売しているが、それぞれ飛行音に独特の特性がある。プロペラの形や枚数などが違うためで、音響パターンで機種を特定できる点に着目した(写真2)。