昨年11月、神奈川県で開かれていたマラソン会場が一時騒然となった。約4キログラムのドローンが落下し、コース付近に居た女性スタッフが軽傷を負ったからだ。4月には英国大使館内に誤って落下させる事故が起こるなど、ドローンの操縦を巡るトラブルが後を絶たない。

 このままではマイナスイメージが先行し、ドローンに対する期待が一気にしぼみかねない――。危機感を抱いた業界関係者たちが相次ぎ立ち上がった。安全かつ確実にドローンを「正しく」飛ばすノウハウを、全国各地の操縦者および予備軍に伝授しようと試みる。操縦スキルを底上し、不安を抱えた消費者たちを安心させるのに一役買おうというわけだ。その実態を確かめるべく、都内で開かれたセミナーを訪れた。

約20人が「味スタ」に集結

写真1●DJI公認のドローン安全運用セミナー「New Pilot Experience」の様子
写真1●DJI公認のドローン安全運用セミナー「New Pilot Experience」の様子
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 6月12日、東京・調布市。サッカーJリーグ、FC東京のホームグラウンドである東京・味の素スタジアムに、約20人の「ドローン・オペレーター」が集結していた(写真1)。

 「パソコンが飛んでいるものだと思って、慎重に扱ってほしい」。熱く語りかけているのは、中国の大手ドローンメーカーDJIの国内販売代理店であるセキドの社員。スタジアム内の会議室でDJI公認の安全運用セミナーが開かれており、それを聞きつけた人々が駆けつけた。ある参加者は「十分な操縦ノウハウを身につけて、安全に利用したい」と語り、熱心に質問を投げかけていてはメモを取っていた。

 DJIが「New Pilot Experience」と題したセミナーを始めたのは2014年。ドローンブームに合わせて、日本を含む世界各国で開くようになり、これまでに300回近い開催実績がある。

 前出の発言は、ドローンの「精密さ」をアピールし、繊細に取り扱うべき製品であるとの認識をまず持つべきだとのメッセージだ。同社によれば、ドローンの墜落事故の大半は製品に関する知識不足によるものだという。機体そのものに関する知識や取り扱いの注意点、さらに操縦テクニックや日々の点検方法など、伝授する内容は多岐にわたる。