日本の電子産業が苦境から抜け出せない。例えば、半導体。半導体の世界売上高は2014年に2年連続して過去最高記録を塗り替えたものの、日本では半導体は構造不況業種に成り下がっている。1980年代後半の日米半導体摩擦がうそのようだ。

 この寄稿では、30年間米国企業で働いた日本人技術者が実際に現場で見た状況を基に、米国電子産業が復活し日本電子産業が凋落していった理由を分析する。日本から見ると派手な動きが目に着く米国だが、実際には米国企業は長い年月をかけて地道に力を付けてきた。それが結実した、と著者は見る。技術者個人のキャリア形成も意外に地道だという。働きながら勉強を欠かさずに力を付けていく。華麗な転職の背景には、たゆまぬ努力があるとする。

 第3回は、さまざまな技術発展や米国の地道な努力によって達成されたプロセスコントロールの革新手法を主に紹介する。(日経テクノロジーオンラインによる要点)

 プロセスコントロール手法に起こった大きな変化を、私の実経験から紹介する2回目。前回のエピソード1では、1985~1995年ごろに米国に本社を置く化学メーカーで私が技術者として働いたときに見た変革の話をしました。その後、私は第一線のエンジニア職をはなれたため、プロセスコントロール手法の発展をみることがありませんでした。新しいプロセスコントロールの概念に再度触れたのは、2005年以降のことです。そのころには、私は、カリフォルニア州のシリコンバレーに移住し、同地の企業であるPDF Solutions社に勤務しておりました。

 シリコンバレーに移ってから知った新しいプロセスコントロールの概念は、AEC/APC(Advanced Equipment Control/Advanced Process Control)と呼ばれています。この概念の特徴は、1つの装置をコントロールすることのみならず、工場全体のプロセスフローをコントロールする、いわゆるプラットフオ―ムソリューションの概念に基づくものです。この概念は、ビッグデータ収集 システムと並び、工場全体の自動化、すなわちFabオートメーションの鍵となります。

 そのAEC/APCにおいて、私が目にしたのは、次のような考え方です。

(1)装置からのセンサーデータと、製品の歩留まり、性能データを格納するための大規模なデータベースを構築する。
(2)データベースより必要なデータを取り出し、短時間で解析し、データベースに格納する。
(3)解析した結果を、見ようが見まいが、全員が共有する。
(4)その結果をもって、工場全体のプロセスにフィードフォワード/フィードバックコントロールをかけ、短時間で製品性能のばらつきをコントロールして、歩留まりを高くする。