元ソニーのCIO(最高情報責任者)で、現在ガートナー ジャパンのエグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏。今回、IT部門はグローバル化に対応不能とする「極言暴論」に対峙する。だが長谷島氏は「この件は楽観的になれない」とする。その真意は。

 日本企業が一斉に海外展開を急ぐ今、システムのグローバル化をいかに推し進めるべきか。これはIT部門にとって最も厳しいテーマだ。「必ずIT部門は変われる」と言い続けている私ですら楽観的にはなれない。

 今回、木村岳史編集委員の「極言暴論」では、この点を衝いた。趣旨を要約するとこうなる。「日本企業はM&A(合併・買収)などを通じてグローバル化を急ぐが、IT部門がアキレス腱。業務プロセスなどの標準化は買収先のほうが先行しており、システム統合に向けたIT部門同士の議論もままならない。買収先のIT部門に取って代わられる日も近い」。

図●海外子会社のIT部門のほうが優秀だ
図●海外子会社のIT部門のほうが優秀だ
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 確かに、大半の日本企業のIT部門は、この極言暴論で描かれているような状況に陥っている。ここ数年で、大企業だけでなく中堅中小企業、そして製造業だけでなく小売りやサービス業など様々な業種の企業がグローバル化に一気に舵を切った。そのため、多くのIT部門はグローバル化に対する準備が全くできていないのだ。

 業務プロセスなどの標準化やシステム統合など、やるべきことは分かっていても、どうやって推進したらよいのかは全く分からない。しかも海外展開を急ピッチで進めている企業では、システム統合も急がなければならない。そうした企業のIT部門の中には、「現状ではとても無理だ」と白旗を掲げるところも少なくないと聞く。