元ソニーのCIO(最高情報責任者)で、現在ガートナー ジャパンのエグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏。今回、長谷島氏は「劣化の進んだIT部門の再建は不可能」とする論陣と対決する。“第2のIT部門”必要論にも通じる、この極言暴論に対してどう反論するのか。

 日経コンピュータの木村岳史編集委員の「極言暴論」の中でも、今回の「劣化の進んだIT部門の再建は不可能」は最も手ごわい。多くの企業でIT部門の劣化が進んでいる事実は、私も認めざるを得ないからだ。

図●劣化の進んだIT部門の再建は不可能
図●劣化の進んだIT部門の再建は不可能
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 この極言暴論の趣旨を要約すると、「IT部門の劣化が止まらず、最近ではシステム開発案件もほとんど無くなったため、人員縮小が進み経営や事業部門との接点も失った。もはや再建は不可能だ」ということになるだろう。確かに、IT部門の多くは予算や人員などを制約されたことで、自らの役割を拡大していこうという推進力が失われている。その結果、基幹系システムの運用など非常に限られた領域にしがみついているのが現状だと思う。

 本来なら、クラウドやビッグデータなど最新の技術やサービスを吟味し、自社のビジネスに活用していくことが、IT部門には求められている。だが、そうした技術やサービス、そして自社のビジネスを、IT部門が十分に理解できているとは言えないのが現状だろう。それをもって劣化と言われれば、受け入れざるを得ない。

 しかし、IT部門の再建が不可能という主張には同意できない。まさに暴論だ。思い出してもらいたいのだが、この手の話は過去にもあった。

 例えば多くの企業がBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を推進しようとした際にも、IT部門は業務プロセスが分からなくなっているので対応できないと言われた。ところが当時も、外部リソースを取り込みながら、BPR推進主体として立派にやり遂げたIT部門はいくらでもあった。

 “ビジネスのデジタル化”への対応が強く求められている今、IT部門は当時と同じことをやればよい。今は経営や事業部門のITに対する要求レベルが高いので、容易なことではないが、やってできないことではない。