元ソニーのCIO(最高情報責任者)で、現在ガートナー ジャパンのエグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏。以前の連載「システム部門幸せ計画」で企業のIT部門が幸せになる道を示したが、新連載ではIT部門限界説に徹底反論し、IT部門の新たな役割を浮き彫りにする。

 クラウドやビッグデータなどの動向に見られるように、ITは加速度的に進化しており、幅広く利用されることによって、今や企業運営に欠かせない“ライフライン”になった。企業のIT部門(情報システム部門)の責務はますます重くなり、IT部門で働く人たちは日々、かなりのプレッシャーを感じながら、仕事に就いているはずだ。

 そうしたIT部門の人たちは、仕事に対して、やりがいや誇りを持てているだろうか。残念ながら、企業の業種や規模を問わず、多くの人が疲弊し切っていて元気がないのが実情ではないかと思う。

 その原因は、単に仕事が激務だからではない。重要かつ難しい仕事を受け持っているにもかかわらず、経営陣や事業部門から評価を得られていないことが大きな要因である。

 システムが順調に動いている時には、IT部門が特に褒められたり感謝されたりすることはない。逆に、何か問題が起きると、途端に社内から「対応が悪い」「スピードが遅い」「コストが高い」などといった文句や非難にさらされることになる。

 こういう状況が続くと、誰もが仕事に対するやりがいや誇りを持てなくなる。仕事に対して受け身になり、自ら新たなことを試みようという意欲も薄れてしまう。新たな問題や障害を避けようとして保守的になり、経営陣や事業部門の要望や要請に対してはディフェンシブな対応を取ってしまいがちになる。

 その結果、IT部門に対する周りの評価を落としてしまうという、負のスパイラルに陥ってしまっている。