シリコンバレーでは今、「Uber」をはじめとする「オンデマンドエコノミー」のサービスが大人気だ。記者のシリコンバレー生活をつづる本コラムでも、様々なサービスを実際に試してみるつもりだった。しかし記者は最近、あることで悩んでいる。

 まず説明すると、オンデマンドエコノミーのサービスとは、学生だったり他に仕事を持っていたりする個人をスマートフォンのアプリケーションなどから呼び出して、車の運転や料理の配達、部屋の掃除などを「オンデマンド」で頼むというものである。

 記者は最近、これらのサービスを使うことが果たして社会的に良いことなのかどうなのか、悩み出している。というのも米国では最近、オンデマンドサービスの正当性を疑いたくなるような記事が、次々と報道されているのだ。

 例えばカリフォルニア州は2015年7月15日(米国時間)、米Uber Technologiesに対して730万ドルの罰金を命じると共に、州が指摘する問題が改善されない場合は、30日以内に同社を営業停止処分にすると発表した(LA Times紙の記事:Uber should be suspended in California and fined $7.3 million, judge says)。

 カリフォルニア州は2013年に法律を改正し、Uberや「Lyft」のようなライドシェア(乗り合い)サービスを合法化しているが、その際にライドシェア事業者に対して、乗客を住所や状態(車椅子を使っているかどうかなど)に基づいて乗車拒否してはならないと定めた。ライドシェア事業者は乗車拒否をしていないことを証明するために、詳細な運行情報を規制当局に提出する必要がある。その情報提供をUberが拒んだというのが、カリフォルニア州当局の主張だ。

 Uberはこの件以外にも、様々な議論を全米で巻き起こしている。例えば、Uberはドライバーをフリーランスの自営業者として扱っているが、そうではなく同社の社員として扱い、社会保険料などをUberが負担するべきだ、という議論がある。実際にいくつかの州で、ドライバーがUberを相手にした訴訟を起こしている。

2016年の米大統領選挙は「Uber選挙」?

 民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントン氏は7月13日(米国時間)、Uberに代表されるオンデマンドエコノミーのことを「ギグエコノミー(日雇い経済)」と表現し、これらサービスの台頭が、米国における労働者保護を揺るがしかねないと指摘した。一方の共和党陣営はクリントン氏の見方に反発しており、LA Times紙は2016年の米国大統領選挙が「Uber選挙」になるとまで言い出し始めている(LA Times紙の記事:2016 presidential race emerging as the first Uber election