自社製品のオープンソースソフトウエア(OSS)化を進めている米Appleや米Microsoft。両社のOSS戦略には一つの共通点がある。それはプログラムのソースコードを公開する場所として、ソースコード共有サービスの「GitHub」を使用していることだ。

 GitHubは米サンフランシスコに拠点を置くスタートアップ、米GitHub(写真1)が運営するプログラム開発者向けのクラウドサービスだ。今日のソフトウエアの多くは、一人のプログラマーが開発するのではなく、時には異なる組織に所属する複数のプログラマーが協力して開発している。GitHubは、プログラマーによる協業を容易にする様々なサービスを提供している。

写真1●米サンフランシスコにある米GitHubの本社オフィス
写真1●米サンフランシスコにある米GitHubの本社オフィス
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 具体的にはソースコードのバージョン(履歴)を管理する機能や、ソースコードをレビュー(査読)したりコメントを付けたりする機能、「イシュー(Issue)」という単位でプログラム開発の進捗を管理する機能、プログラムを実際の稼働環境にデプロイ(配置)する機能などを備える。

GitHubはソフト開発者の「履歴書」

 GitHubのポイントは、バージョン管理システムという昔から存在するツールに、プログラマーによるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)としての要素を追加したことだ。GitHubのアカウントを持つ開発者は、GitHubを通じて組織の垣根を越えて協力しながらプログラムを開発できる。開発者のプロフィールページには、その開発者が開発に参加するプログラムの件名や、活動状況などが表示される。GitHubのプロフィールページは今や、OSS開発者の「名刺」や「履歴書」になりつつある。世界中のソフト開発者が集まるハブ(中心地)。それがGitHubなのだ。

写真2●GitHubのChris Wanstrath CEO(最高経営責任者)
写真2●GitHubのChris Wanstrath CEO(最高経営責任者)
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 GitHubのCEO(最高経営責任者)であるChris Wanstrath氏(写真2)によれば、2015年10月現在で、全世界1100万人のソフトウエア開発者が、合計2700万件のソフトウエア開発プロジェクトにGitHubを利用しているという。AppleやMicrosoftがソースコードの公開にGitHubを選ぶのも、GitHubを中心とする巨大な「開発者コミュニティ」にアクセスするためだ。

Google、Microsoftは自社サービスからGitHubに移行

 Appleは2015年12月3日(米国時間)に、プログラミング言語の「Swift」に関連するソフトウエアをOSSとして公開。その際にGitHubにAppleのページを設け、GitHubの仕組みを通じて利用者からのフィードバックを受け付け始めている。

 Microsoftも2014年からOSSの公開にGitHubを利用している。同社は2006年から独自のソースコード共有サービス「CodePlex」を運用しているが、最近は自社製OSSの公開はGitHubをメインにしている。