「ビッグデータやデータサイエンスの力を中小企業に届けたい」――。そう語るのは米Salesforce.comの共同創業者でCTO（最高技術責任者）を務めるParker Harris氏。営業支援システムのSaaS（ソフトウエア・アズ・ア・サービス）から始まったSalesforce.comが「総合ITベンダー」へと姿を変え始めている現状を聞いた。
顧客関係管理（CRM）システムのSaaSからビジネスを始めたSalesforce.comですが、今や業務システムに必要なあらゆる要素を提供する総合的なITベンダーへと姿を変え始めた印象があります。
当社が目指しているのは、様々な業界に属するあらゆる規模の企業の「成功」を手助けするパートナーになることだ。そのためには、特定の用途に向けて作られた「ソリューション」ではなく、顧客の様々な要望に応じてカスタマイズできる「プラットフォーム」を提供する必要がある。
2015年秋には、プラットフォームに関する三つの発表を行った。一つめは、当社がこれまで提供してきた様々な種類のPaaS（プラットフォーム・アズ・ア・サービス）を「Salesforce App Cloud」という一つのサービスに集約したことだ。
これまではCRMのSaaSである「Sales Cloud」をカスタマイズできるようにした「Force.com」というPaaSと、様々なミドルウエアを組み合わせてアプリケーションが開発できる「Heroku」というPaaSなどが独立して存在していた。App Cloudは、これらPaaSを束ねた総称となる。
鍵になるのは、ユーザーインターフェース（UI）のプラットフォームである「Lightning」だ。ユーザー企業はこれまで、Force.comやHerokuなどのPaaSの上で稼働するアプリケーションのUIは、スクラッチで作る必要があった。Lightningはモバイルアプリケーションやデスクトップアプリケーションを開発する上で必要となるUIの部品（コンポーネント）をサービスとして提供するもので、ユーザー企業はこれらの部品を使用すれば、UIをスクラッチから開発する必要が無くなる。
顧客からの電子メールの内容をシステムが理解
二つめは、データサイエンスのプラットフォームである「SalesforceIQ」だ。これは、データサイエンスやビッグデータの力を中小企業にも届けるものとなる。例えばユーザー企業はSalesforceIQを活用することで、電子メールなどで寄せられた顧客企業に関する情報を、CRMシステムに自動的に登録できるようになる。ここではSalesforceIQが電子メールの内容を分析し、顧客が何を求めているのか、営業担当者が次に何をしなければいけないのかを、自動的に抽出する。
SalesforceIQはまだCRMシステムとしか連携させていないが、非常に大きな可能性を秘めている。様々なデータから知見を取り出すプラットフォームとして、これから大きく育てていきたい。
三つめはIoT（Internet of Things）だ。「Thunder」というプラットフォームを新たに開発した。Thunderを活用したSaaSである「IoT Cloud」も2016年に開始する予定だ。
