米General Electric(GE)がIT企業の買収を加速している。子会社GE Digitalの産業向けIoT(Internet of Things)プラットフォーム「Predix」を拡充するのが狙いで、2016年9月にPredixの競合だった米Meridiumを買収したのに続き、11月にはSaaS(Software as a Service)の米ServiceMaxや機械学習のスタートアップなどを相次ぎ買収した。

 「製造業における設計、商用化、製造、サービス、運用の全てをつなぐ『デジタルスレッド(Digital Thread)』をより強固なものにする。そのためにPredixへの投資や、優れたタレントの採用、M&Aをやってきた」。GEのJeff Immelt会長兼CEO(最高経営責任者)は2016年11月15、16日に米サンフランシスコで開催したPredixの年次イベント「GE Minds + Machines 2016」でこう語った(写真1)。

写真1●米GEのJeff Immelt会長兼CEO(最高経営責任者)
写真1●米GEのJeff Immelt会長兼CEO(最高経営責任者)
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 GEはPredixを中心とするソフトウエア事業の売上高を2020年までに150億ドル(約1兆7000億円)にまで伸ばす計画。2016年のソフト売上高は前年比25%増の70億ドルを見込んでいるが、目標を達成するには今後も年率20%を超える成長を継続させる必要がある。既に顧客基盤があるソフト企業を買収することは、GE Digitalの成長戦略にとって欠かせないピースになる()。

表●GE Digitalが最近買収したIT企業
企業名概要発表時期買収金額
米Meridium資産パフォーマンス管理(APM)ソフト2016年9月4億9500万ドル
米ServiceMaxフィールドサービス管理SaaS2016年11月9億1500万ドル
カナダBit Stew Systemsデータ統合ツール2016年11月非公開
米Wise.io機械学習クラウド2016年11月非公開

 4億9500万ドルを投じたMeridiumの買収は、典型的な「顧客込みの買収」と言えそうだ。1993年に創業したMeridiumは、APM(Asset Performance Management、資産パフォーマンス管理)ソフトの大手。APMソフトは、産業機器などの「資産」が発生するデータを分析することで、資産の生産性を向上させるものであり、GEのImmelt会長は「PredixのキラーアプリケーションはAPM」だと断言する。

 Meridiumの顧客には、化学メーカー大手の米Dow Chemicalや石油大手のExxonMobilなど、巨大企業が名を連ねる。GEも独自のAPMソフトを販売してきたが、MeridiumのAPMソフトを組み込むことで、Predixの顧客基盤は大きく拡大する。

フィールドサービス管理SaaSを9億1500万ドルで買収

 9億1500万ドルを投じて買収した米ServiceMaxは、メーカーやその代理店が提供するハードウエアの保守・点検サービス(フィールドサービス)を管理する「フィールドサービス管理」のSaaSを提供する企業。ServiceMaxのSaaSは、米Salesforce.comの顧客関係管理(CRM)のクラウド「Salesforce」上で稼働している。Salesforceが営業やマーケティング要員向けのSaaSであるのに対して、ServiceMaxは保守サービス要員向けのSaaSになる。

 ServiceMaxは、保守対象機器の状態の管理や、保守サービス要員のスケジュール管理などを支援する。保守サービス要員はスマートフォンやタブレットのアプリから、保守サービスに必要なさまざまな作業を実行できる。GEのImmelt会長は、製造業のビジネスモデルが今後、製品の販売と保守から、製品込みのデジタルサービスへと変貌すると語る。ServiceMaxはそのようなサービスモデルのビジネスモデルを実現する上での鍵となる製品になりそうだ。

 GE Minds + Machines 2016では、機械学習を手がけるスタートアップの買収も2件発表している。