米Salesforce.comが、従来とはかなり毛色の異なるPaaS(Platform as a Service)を発表した。従業員の教育・研修プラットフォーム「myTrailhead」だ。同社のMarc Benioff CEO(最高経営責任者)は「第4次産業革命を起こすイノベーターを育てることが新プラットフォームの狙いだ」と語る。

 Salesforceは2017年11月6日から米サンフランシスコで年次カンファレンス「Dreamforce 2017」を開催し、初日の基調講演でBenioff CEOが様々な新機能を発表した()。それらのなかでも目玉となるのが、教育・研修プラットフォームのmyTrailheadだ。

表●米Salesforce.comが発表した主な新機能
名称ジャンル概要
myTrailhead教育・研修「Salesforce CRM」などの使い方に関する教育・研修プログラム「Trailhead」をプラットフォーム化。コンテンツをユーザー企業のものに置き換え、従業員の教育・研修に利用できるようにした
myEinsteinAIAI(人工知能)のプラットフォーム「Einstein」を使ったアプリケーション開発を容易にしたもの。ユーザー企業独自の「予測モデル」や「ボット」をコーディング不要で開発できる
myLightningUIUI(ユーザーインタフェース)開発のプラットフォーム「Lightning」のカスタマイズを容易にしたもの。テンプレートから選ぶだけで、UIデザインを変更できる
mySalesforceモバイルアプリSalesforceのクライアント用モバイルアプリの「ユーザー企業版」を開発できる機能。アプリの名称やアイコンをユーザー企業専用にカスタマイズできる
myIoTIoTSalesforceのIoT(Internet of Things)プラットフォームを使ったアプリ開発を容易にしたもの。IoTデバイスと連携するワークフローなどをコーディング不要で開発できる

 myTrailheadは、Salesforceが同社のSaaS(Software as a Service)などの使い方をユーザー企業に学んでもらうために、2014年から始めた教育・研修プログラム「Trailhead」をプラットフォーム化し、ユーザー企業による従業員の教育・研修に転用できるようにしたものだ。

「ゲーミフィケーション」で楽しく学習

 ユーザー企業は自社で作った教育・研修コンテンツをmyTrailheadにアップロードし、自社の従業員にそのコンテンツを学ばせる。myTrailheadのポイントは、Salesforceが自社の従業員やSaaSのユーザーをトレーニングしてきたノウハウが組み込まれていることだ。「ゲーミフィケーション」と呼ばれる仕組みがその一つ。従業員による学習の進捗状況などが可視化されるため、従業員はゲームを楽しむような感覚で教育・研修を受けられるという。

 Benioff CEOはDreamforceの基調講演で、同社のプラットフォームが「第4次産業革命を実現するために存在する」と強調し続けた(写真1)。営業支援やマーケティング支援から始まったSalesforceのSaaSやPaaSだが、2015年にIoT用のPaaSを始めるなど、そのカバー範囲は広がり続けている。

写真1●基調講演会場を歩き回りながら熱弁するSalesforce.comのMarc Benioff CEO
写真1●基調講演会場を歩き回りながら熱弁するSalesforce.comのMarc Benioff CEO
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 ただし、企業の「デジタル変革」はツールだけで成功するものではない。従業員のスキルセットや働き方、意識なども変える必要がある。人材面から企業のデジタル変革を支援するのがmyTrailheadの役割となる。

 実はSalesforceは以前から、ユーザー企業の社内における社員の行動変革や意識変革を促すアプローチを採っていた。Salesforce CRMを売り込む際に「カスタマーサクセス(顧客の成功)」という概念を強調していたのが代表例だ。