メモリーを4テラバイト搭載するモンスターマシンやバックアップ専用の巨大ストレージ――。米Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」の内部は、従来型のデータセンターとは大きくかけ離れた姿に進化している。Azure部門のCTOが、その「凄い中身」の一端を明らかにした。

 米MicrosoftでMicrosoft AzureのCTOを務めるMark Russinovich氏は2017年9月26日(米国時間)に米フロリダ州オーランドで開催した技術イベント「Microsoft Ignite 2017」で「Inside Microsoft Azure datacenter hardware and software architecture」と題する講演を行い、同社がAzureのために独自開発してきたハードウエアの詳細について解説した(写真1)。

写真1●米MicrosoftのMark Russinovich氏
写真1●米MicrosoftのMark Russinovich氏
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 Russinovich氏の講演からは「Microsoftはソフトウエアの会社である」という印象が完全に過去のものになったことが分かる。Microsoftは現在、仮想マシンを稼働させるサーバーだけでなく、データセンター内で使用するさまざまなネットワーク機器やAI(人工知能)に最適化したFPGAボード、アーカイブ用の専用ストレージなども独自に開発しているためだ。Russinovich氏が披露したMicrosoft Azureの「データセンター」「ネットワーク」「サーバー」「ストレージ」という4つのポイントをそれぞれ見ていこう。

Azureにも導入された「Availability Zones」

 データセンターに関してMicrosoftは、2017年9月に「Availability Zones(AZ)」という概念を導入した。これは「Amazon Web Services(AWS)」におけるAvailability Zonesと同じ概念である。Microsoftは世界中の様々な地域に、データセンター群である「リージョン」を設けている。このリージョンの中における、水や電力、ネットワークの供給ラインが異なる「区画」がAZとなる。AZはリージョンの中に最低3つ存在し、あるAZが物理的にダウンしても他のAZに影響が及ばないようになっている。ユーザー企業はAZをまたいでサーバークラスターを構築することで、AZの障害に備えられるようになる。

 リージョンの中の各AZは、600マイクロ秒以内という低遅延のネットワークで接続されている。2017年9月の段階でAZが試験導入されたのは、米バージニア州にある「East US 2」リージョンとオランダにある「West Europe」だけだが、2017年内には欧米の他のリージョンやアジアにあるリージョンなどにもAZを試験導入する予定だという。

 Microsoftはデータセンターが消費する電力に関しても興味深い取り組みをしている。まず同社は2018年までに、データセンターが消費する電力の50%を「風力、太陽光、水力によって生み出された電力」に移行する計画だ。そして2020年までにこの割合を60%に高める。

 さらにMicrosoftは2017年内に、データセンター内における燃料電池の試験導入を開始する(写真2)。燃料としては天然ガスを使用するものの、天然ガスをそのまま燃焼させるのではなく、天然ガスに含まれる水素と酸素を化学反応させることで電気を作り出す。

写真2●MicrosoftがAzureのデータセンターに導入する燃料電池
写真2●MicrosoftがAzureのデータセンターに導入する燃料電池
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 火力発電所で生み出された電力を使用する場合、送電網やデータセンター内の変電設備などでの電力のロスが発生する。一方、燃料電池を使う場合はデータセンター内で発電した電力を送電網などを経ずに消費するため、燃料効率が2倍に高まるだけでなく、停電の影響を受けなくなるため信頼性も高まる。