「経営者の80%が産業IoT(Internet of Things)は重要だと認識しているが、実際に取り組んでいる企業は8%に過ぎない。産業界の『デジタルギャップ』を我々が解消する」。米General Electric(GE)のJohn Flannery会長兼CEO(最高経営責任者)は2017年10月25日から米サンフランシスコで開催された年次カンファレンス「Minds+Machines」の基調講演でこう語り、デジタル事業を今後も堅持していく姿勢を見せた(写真1)。

写真1●米GEのJohn Flannery会長兼CEO
写真1●米GEのJohn Flannery会長兼CEO
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 GEが毎年秋に開催しているMinds+Machinesは、産業IoTのプラットフォーム「Predix」を中心とする、同社のデジタル事業に関するカンファレンスだ。デジタル事業はFlannery氏の前任者であるJeff Immelt氏が力を注いできた分野だ。しかしImmelt氏は仏Alstomのエネルギー部門や米Baker Hughesなどの大型買収によって拡張してきた電力事業や石油&ガス事業がここにきて業績不振に陥ったことから、2017年8月にCEO退任に追い込まれた。

 16年ぶりにImmelt氏の後任としてCEOに就いたFlannery氏は早くも、2兆円規模の事業売却や本社組織の大規模なリストラなどのコスト削減を断行する姿勢を見せている。だがデジタル事業に関しては、前任者の路線を継承する。Minds+Machinesの基調講演でFlannery氏は「GEは全社的にデジタルに賭けている」「GEの全社員がコードを理解するようになる」など、デジタル事業への熱意を何度も表明した。

MSなどパートナーとの連携強化

 同時にFlannery氏は「産業界におけるデジタル変革を成し遂げるには、(システムインテグレーターなどの)パートナーが重要だ」と強調している。GEは米シリコンバレーに置くデジタル事業組織のGE Digitalに、2011年から通算で40億ドル近くを投じてきたとされるが、GE Digitalに外部資本が入る可能性があるとの報道もある。今回の基調講演ではGE Digitalの処遇について説明はなかったが、GEがデジタル事業を単独で推進するのではなく、パートナーとの連携をより深めていくという意思表示があった。

 実際に今回のMinds+Machinesの目玉は、パートナー関連の発表だった。10月25日の基調講演には米MicrosoftのSatya Nadella CEOが登壇し、GEのFlannery CEOと対談(写真2)。2017年11月からMicrosoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」上でGEのPredixが利用可能になると発表した。GEとMicrosoftは2016年にクラウド分野で提携している。

写真2●対談する米MicrosoftのSatya Nadella CEO(左)とGEのFlannery CEO
写真2●対談する米MicrosoftのSatya Nadella CEO(左)とGEのFlannery CEO
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標準パソコン環境として、Macも採用

 Minds+Machinesの前週となる10月18日には、米AppleとGEのIoTアプリケーション開発に関する提携も発表されている。両社はPredixと連携する「iOS」用アプリを開発するためのSDK(ソフトウエア開発キット)を10月26日から公開し始めた。GEは30万人を超える社員の標準的なパソコン環境の選択肢に「Mac」を加える方針も明らかにしている。