「1兆のIoTが人類の進化を加速」――。ソフトバンクグループの孫正義社長は2016年10月25日(米国時間)、9月に買収した英ARMがシリコンバレーで開催した「ARM TechCon 2016」の基調講演に登壇し、ARMを買収した意義やIoTの未来像を語った(写真1)。

写真1●ソフトバンクグループの孫正義社長
写真1●ソフトバンクグループの孫正義社長
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 ARM TechConはイギリスに本社があるARMが、シリコンバレーの半導体技術者を対象に毎年開催しているカンファレンス。孫社長は基調講演の冒頭、「ソフトバンクによるARM買収後も、ARMとパートナーとの関係は変わらない。ARMは誰もが信頼できるプラットフォームとして維持する。どうか心配しないでください」と語り、「ARMアーキテクチャー」を半導体メーカーにライセンスするARMのビジネスモデルや、ソフトバンク子会社としてのARMの独立性を維持していくと強調した。

IoTは「カンブリア爆発」の再来

 続いて孫社長が言及したのは「カンブリア爆発」だ(写真2)。5億年前のカンブリア紀に生物は飛躍的な進化を遂げた。それをカンブリア爆発と呼ぶが、孫社長は生物の進化が爆発的に発生した原因として「生物が『目』というセンサーを手に入れたこと」を挙げる。「目があることで生物は、ほかの生物を追いかけて食べてしまえるようになった。これはとても重要なことだが、より重要なのは、目というセンサーから大量のデータを集められるようになったこと。データの量が増えることで、脳の学習サイクルが加速し、その後の生物の進化をさらに加速させた」(孫社長)。

写真2●今回のテーマ「カンブリア爆発」を語る孫社長
写真2●今回のテーマ「カンブリア爆発」を語る孫社長
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 それと同じことが今、人類が作り出した人工物にも、IoTという形として起きているというのが孫社長の主張だ。孫社長は2035年までに1兆個を超えるIoTデバイスが、センサーデータをクラウドに蓄積できるようになるという見通しを語る。そしてクラウド上の人工知能がセンサーデータを機械学習して、さらに賢くなると主張した。

 「IoTとAIの関係は、目と脳の組み合わせが生物の進化を加速させたのと同じだ。カンブリア爆発のように、IoT爆発(エクスプロージョン)が起こる」。孫社長はそう述べ、「IoT爆発が起ころうとしている今だからこそ、ARMを買収した」と説明した。