米Amazon Web Services(AWS)がエンタープライズIT市場への攻勢を強めている。既存製品に比べて価格が「10分の1」をうたう「価格破壊」のサービスを次々投入するだけでなく、米Accentureなど大手企業に強いシステムインテグレーターをパートナーとして取り込み始めている。

 「Accenture社内にAWSに詳しい技術者を1000人養成する」。AWSの営業トップであるAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)Vice Presidentはこう明かす。AWSのエンタープライズIT市場における強みは何か。Selipsky氏に聞いた。

(聞き手は中田 敦=シリコンバレー支局)

クラウドサービスの「Amazon Web Services」は当初、顧客の中心はスタートアップやアプリケーション開発者でした。その後、エンタープライズの顧客が増えるにつれ、AWSの戦略はどのように変わりましたか。

 顧客のほとんどがスタートアップだった頃、我々はマーケティングの中心を「顧客同士の会話の促進」に据えていた。ユーザー会などのコミュニティーを様々な土地に設けることで、大規模な広告をしなくても、AWSを気に入ったアーリーアダプターが、他社のアプリケーション開発者にAWSの良さを伝えてくれた。

写真1●米Amazon Web Services Vice President Adam Selipsky氏
写真1●米Amazon Web Services Vice President Adam Selipsky氏
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 今でもスタートアップは我々にとって重要な顧客であり、ユーザー会などを重視する姿勢は変えていない。エンタープライズ市場に売り込む上で、様々なマーケティング戦略を追加していったのが実情だ。

 法人営業部隊を整備し、ユーザー企業からの疑問に答えるソリューションアーキテクトをそろえ、ユーザー企業のエンジニアにAWSを使ったシステム構築の方法を教えるトレーニングサービスを用意し、AWS上で使用できる商用ソフトウエアの種類を増やし、ユーザー企業向けにAWS上でのシステム構築サービスを提供するシステムインテグレーターをパートナーとして認定してきた。

 今のAWSのマーケティング戦略の中心は、パートナーのエコシステム作りにシフトしている。2015年10月に発表したAccentureとの提携は、大企業にAWSを売り込んでいく上で、非常に重要なものとなる。

Accentureとの提携の具体的な内容は?

 Accentureは提携に基づき同社の社内に「AWS事業部」を設ける。我々がAccentureに協力して、Accenture社内にAWSに詳しいシステムアーキテクトやアプリケーション開発者を、2016年末までに1000人養成する予定だ。