「エンタープライズ分野で世界最大級のテクノロジーカンパニーになった」。米Dell TechnologiesのMichael Dell会長兼CEO(最高経営責任者)は2016年10月20日(米国時間)に開催した「Dell EMC World 2016」の基調講演で、感慨深げにそう語った(写真1)。米EMCの買収を2016年9月に完了したDell Technologiesの売上高は740億ドルで、米IBMの817億ドル(2015年12月期)に肉薄する。

写真1●米Dell TechnologiesのMichael Dell会長兼CEO(最高経営責任者)
写真1●米Dell TechnologiesのMichael Dell会長兼CEO(最高経営責任者)
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 Dell EMC Worldは昨年まで「Dell World」と呼ばれ、Dell創業の地であるテキサス州オースティンで毎年開催されている。「32年前にこの会場のすぐ側で小さな会社を始めた。それがここまで大きくなったなんて信じられない」。そう誇らしげに語るDell会長。EMC買収に投じた資金は670億ドルで、IT業界では最大規模の買収だ。EMC買収によって、サーバーやストレージ、仮想化、セキュリティなどの分野で市場シェアも1位になる見通し(写真2)。Dell会長は「次の産業革命である『Internet of Everything』のITインフラを支える会社になる」と意気込んだ。

写真2●Dell会長が示した市場シェア
写真2●Dell会長が示した市場シェア
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 かつて「デルモデル」を掲げ、米Intelのプロセッサを搭載する業界標準ハードウエアに、「Windows」や「Linux」といった業界標準ソフトウエアだけを搭載する「業界標準製品」の販売に徹していたDellの面影は無い。Dell会長は年間45億ドルを研究開発(R&D)に投じると明かす。「当社は(株式を公開しない)プライベートカンパニーであり、短期的な収益ではなく、長期的な成功に向けて投資していく。我々が見ている地平(タイムホライゾン)は数十年単位だ」。Dell会長はそう力説した。

 Dell Technologiesはその傘下に、パソコン部門のDell、ITインフラ部門のDell EMC、ソフトウエアのPivotalとVMware、セキュリティのRSAとSecureWorks、クラウドサービスのVirtustreamという事業体や子会社が連なる(写真3)。Dell会長はその体制を「Dellファミリー」と表現する。それぞれの事業体はある程度の独立性を保ち「スタートアップのような文化を持ちながら、強力に事業を推進していく」(Dell会長)とした。

写真3●Dellファミリーを示したスライド
写真3●Dellファミリーを示したスライド
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 Dell EMC Worldを取材して驚いたのは、その「EMC色」の強さだ。Dell会長はDell Technologiesの今後の戦略として「モダナイズ」「オートメーション」「トランスフォーム」の三段階を掲げる。モダナイズは、顧客が保有するメインフレームなどの旧来型ITインフラをオープンプラットフォームに置き換えていくもので、Dell EMCがその戦略を担う。